第445話 魔術師リアムの上級編二日目の宣言
祐介がリアムをぽかんとして見た後、思い切り顔を歪めて言った。
「はい? 何言ってんのサツキちゃん」
なので、リアムは再度伝えることにした。
「私がその役目を引き受けよう、と言った」
「いや、それは聞いたけど、言ってることおかしいでしょ」
祐介は呆れ顔だ。
「何がおかしいのだ。美人局にならない様にする為には、早川ユメには男ではなく女が懐柔にあたった方がいいではないか」
「いや、でもねサツキちゃん? 彼女は女には興味ないかと」
「早川ユメに友はいるのか?」
「はい?」
祐介の顔が更に歪んだ。いい男が台無しである。
「私が友となれぬか、早川ユメと接触して挑戦してみたいと思う」
「いや無理でしょ」
祐介が即答した。
「何故だ」
「何故だって、あの人に会った時に思い切り馬鹿にされた様な目で見られたの、覚えてない?」
「地味子とか言われたことか」
「そうそれ。僕は断然あっちよりサツキちゃん派だけど、あの人は派手が可愛いとでも思ってんじゃない」
祐介の言葉には、珍しく棘があった。
「祐介が人のことを悪し様に言うのは珍しいな」
「だってさ!」
ぐわっと祐介が振り返った。目が怖い。
「失礼しちゃうと思わない!? 人の好みはそれぞれだし、サツキちゃんにはサツキちゃんの魅力がいっぱいあるのに、ちょっと質素な格好をしてるってだけで地味子とか言っちゃってさ、サツキちゃんの良さを知りもしない癖にあの言い方はないし、あの上から目線はいただけない!」
「ゆ、祐介、落ち着け」
「いーや落ち着かない! サツキちゃんは努力家だし優しいし思慮深いしでもはっきりしててそこがまた格好いいし、ていうかそもそも化粧を盛ってないのだってやり過ぎるとやばい位可愛くなるからであってそういう所を知りもしないで言いたい放題で!」
「祐介、落ち着け、頼む。そうまくし立てられてもな、私は早川ユメではないしだな、それにあの時早川ユメはひと言ふた言しか喋っていなかった筈だぞ? 言いたい放題などではなかろう」
だが祐介はまだ言い足りないらしい。
「サツキちゃん、自分が馬鹿にされて悔しくないの!? 僕はサツキちゃんを馬鹿にされて、すっっっごく腹立ったし今だって思い出して腹立ってるよ! もうぜーんぜんサツキちゃんのこと分かってない!」
「分かった、分かったから」
リアムの為に怒ってくれていることは理解した。その怒り方が尋常ではないが。だが、祐介のその怒りのお陰で一ついい案を思いついた。転んでもただでは起きぬ、それが魔術師リアムである。あとは祐介を説得すれば、きっといける。
リアムは、祐介の前に移動し祐介の顎に触れた。
「では、私の良さを分からせてやろうではないか」
「――え。サツキ、ちゃん? わか、分からせるって、その」
祐介の目が泳ぎ始めた。もしやこれは何かを勘違いしているのではないか。
「誤解するな。祐介はもう十分分かっているのだろう?」
「あ、なんだ……」
少し肩を落とした気がしたのは気の所為であろうか。一体何を期待していたのか、聞かない方がよさそうであった。
「きっちりとメイクをし、大人の色香を醸し出せば、早川ユメも『地味子』などとは思わず接する様になるのではないか?」
「……まじ?」
祐介が赤い顔をして、言った。
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