第425話 魔術師リアムの上級編二日目はまったりと
本来は出社の今日だが、リアムの体調不良の所為で今日は臨時休暇を取れている。そして羽田の件がある為、祐介も今日は一緒に休みだ。従って、二人はのんびりと起床し、祐介が炊いておいたご飯に卵を割り入れ醤油と鰹節を掛けるという何とも美味な朝食をいただいた。
「サツキちゃん、今日はさ、のんびり映画観ようよ」
「いいぞ。何を観るのだ?」
「実は昨日、借りてきてました!」
そう言って祐介が鞄からガサゴソ取り出したのは、歪な形の金属のモンスターの絵が描かれている物だった。
「実はこれ、魔法使いが出てきます」
「観る」
「じゃあ決まり! えーと、サツキちゃんちはDVDプレーヤーは……あるね」
祐介がいそいそと支度をし、二人並んでベッドの上に足を投げ出し、壁に寄りかかった。
「サツキちゃん、クッション」
「祐介はいいのか?」
壁に直接寄りかかっては疲れるのではないか。すると、祐介が薄っすらと頬を赤らめながら言った。
「……えーと、サツキちゃんが許してくれるなら、僕に寄っかかってくれると僕もクッションを使えます」
「どういうことだ?」
「こういうこと。サツキちゃん、ちょっと前にずれて」
「こ、こうか?」
「うん」
リアムが壁から背中を離し少し前に出ると、祐介が壁とリアムの間にスポッと入った。そして膝を立てると、リアムを足の間に挟み込んだ。
「寄りかかっていいよ」
「お、おお、だがこれは」
「前に酔っ払った時にしてたじゃない」
「……そうだった」
殆ど覚えていなかったが、翌朝に祐介が再現してくれた。顔から火が出そうになったのを覚えている、例のやつである。
祐介が、膝の上に毛布を掛けてくれた。
「もっと寄りかかってよ」
「う、うむ」
「あの時はもっと全然遠慮なかったよ」
「こ、こうか?」
リアムは思い切り祐介にもたれかかった。頭の天辺が祐介の首元あたりまで来るが、祐介は苦しくないのだろうか。
「いい感じ」
一体何がどういい感じなのかは分からないが、ここのところもうずっと密着しているので祐介も離れるのはきっと寂しいのだろう。それにまあ、正直悪くはない。
「じゃあ始めるね」
祐介がリモコンを操作すると、映画が始まった。魔法使いが出てくると言っていたので、自身が魔術師であるリアムとしてはこちらの世界で魔法がどう描かれているのか、純粋に興味があった。前のあの魔女の映画は殆ど観ることが出来なかったので、尚更である。
地味だが美しい女性が登場した。特に魔法は使っていない様だ。ではこの者は魔法使いではないのだろうか。ああ、兵隊に絡まれておる! 誰か早く助けねば! すると、リアムが願った助けがやって来た。その男を見た瞬間、リアムは驚いてつい声を上げてしまった。
「ユラではないか」
「え? 誰?」
勿論これは作られた物で、絵でしかない。だが、あまりにも雰囲気が似ていた。金髪に白い服、少し人を食った様な生意気そうな微笑み。
「同じパーティーにいた僧侶だ。イケメンパーティーだったので勿論イケメンだったが、見た目がそっくりだったので驚いてしまったのだ」
「これにそっくりなの? そりゃあイケメンだね」
「恐らくだが、サツキの命を救ったのはそいつだ」
リアムが言った。
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