ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件
第398話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下一階のファイヤーゴースト戦続き
第398話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下一階のファイヤーゴースト戦続き
ユラと繋ぐ手を引っ張ったが、反応がない。ただひたすら一点、ファイヤーゴーストの火種を見つめていた。
「ユラ! しっかりして!」
「どうしたのサツキ!」
ウルスラが声を掛けてくれたが、サツキにも分からない。
「ユラの様子がおかしいの! 心ここにあらずって感じで!」
すると、アールが応えた。
「それ呑まれてるんだよ! ゴーストってのは闇属性だから!」
「の、呑まれてるってどういうこと!?」
アールはこのダンジョンの経験者だ。やはり詳しかった。聞けば知ってることはちゃんと答えてくれるのだ。皆、ちゃんとした答えが返ってこないと思って聞かないだけで。
「本当は触っちゃいけない奴なのに、火種を取る為に手をつっこんだから、闇に呑まれちゃってるんだよ!」
「え!? ど、どうすればいいの!?」
ユラの手を振っても引っ張っても、相変わらず反応しない。ユラの腕の黒い痣が、どんどん上がってきている。ファイヤーゴーストの身体の中にあるユラの腕も、どんどん火膨れが広がっていた。
「やだ! この痣どうすればいいの!?」
サツキは半泣きになってしまった。これがこのまま身体中を覆ったら、ユラは一体どうなってしまうのか。いやだ、どうしよう! サツキはパニックになりかけていた。
すると、アールが言った。
「闇に呑まれかけた人間には、そいつが好きなことをしてあげると戻ってくるって聞いたかも!」
「そいつが好きなこと!? え!?」
サツキが知ってるユラの好きなこと。そんなの、一つしか思いつかない。
無理やりだけど、練習させられておいてよかった。サツキはこれまでのユラの強引さに、少し感謝をした。
そして、後衛の二人に向かって大声を上げる。
「後ろ向いてて! 絶対こっち見ちゃ駄目!」
「ちょっとサツキ!? あなた一体何をするつもりよ!」
「いいから早く!」
「ウルスラ! 聞いてやれ! ユラが危ないぞ!」
アールがウルスラを引き寄せ、頭を押さえつけて振り返れない様にしてくれた。でかした、アール!
「いいぞ!」
「いいって言うまで絶対振り向いちゃ駄目だからね!」
すう、と息を吸って、サツキはユラを助けるべく唱えた。
「イルミナ! 野原サツキ!」
そして急いでユラの前に来たが、ユラの背が高すぎて届かない。サツキはユラと繋いでいた手を解くとユラの首に両腕を回し、自分の高さまで無理やり引き下げた。
やはり目は何も見ていない。綺麗な水色の瞳は、ここまでしてもサツキの目を見ない。
「ユラ!! ――戻ってきて!」
そしてサツキは、ユラの頭を押さえて押さえて、キスをした。唇同士が触れ合ったが、目を開けて確認してもユラの目には相変わらず反応がない。わざわざ女になったのに。
勇気を出すのよ、サツキ!
ユラの命の為に、サツキは恥をかなぐり捨てた。
少し開いていたユラの口の中に舌を入れた。ユラがこれまで散々してきたから、何となくどうしたらいいのかは分かったし、一回は無理やり応えさせられたから、経験済だ。負けるなサツキ!
ユラが喜ぶ様に、ユラがもっと欲しいと思う様に、サツキは時折息継ぎを入れながら、ユラに深いキスを繰り返した。
すると。
ビク! とユラが反応してサツキと目が合ったかと思うと、瓶を持っていない方の手でサツキをぐいっと抱き寄せた。
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