第140話 OLサツキの初級編三日目、終盤へ
やはりこのフロアは物理攻撃の方が倒し易いモンスターが大半の様で、勇者と剣士が前衛についた途端歩みが早くなった。成程、フロアの傾向によりやはり臨機応変に変えていった方がいいものらしい。
ドラゴンまで倒したパーティーだ。そんなことは百も承知なのだろう。なのに意地を張るユラに、ウルスラもつい呆れてしまった、そんなところなのかもしれない。
今はすっかり元の雰囲気に戻った。アールが気にせずに話をしているからである。アールが馬鹿でよかった、今回は本当にそう思った。
「なあ須藤さん、須藤さんて次どうやったらレベルアップするんだ?」
緑色のミニ怪獣型スライムの須藤さんは、前衛のアールの隣をとてとてと歩いている。足が短い為歩きにくそうだが、どういう原理なのか一歩でかなり進む。足の裏の部分にキャタピラ的仕様でもついているのかもしれない。でろでろの時は擦って歩いてたし。
アールの呑気な質問に、須藤さんは首を可愛らしく傾げた。
「うおうっ」
思わずサツキの口から感嘆の声が漏れる。ん? とアールが不思議そうな顔で後ろを振り返ったが、素知らぬ顔をしてやり過ごした。
ユラが微妙な表情で尋ねてきた。
「サツキは可愛らしいのがそんなに好きか」
「可愛いは正義です」
食い気味で答えると、ユラは「あ、そう」とだけ言った。恐らく理解を放棄したんだろう。少し前のアールに対するサツキの怒りを見ているので、正直この件については関わりたくないのかもしれなかった。
「アール、そいつもバトルに参加させればいいよ。さっきみたいな回復魔法も使えるし」
ユラがアールに提案した。
「そっかあ! じゃあ次に誰か怪我したら、須藤さん癒してよ!」
須藤さんが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。すると、ラムがサツキの手を引っ張る。
「ん? どうしたの、ラムちゃん」
ラムは空いている方の手でハンマーの形を作った。こっちだってやったるで、ということらしい。
「うん、ラムちゃんもお願いね!」
にっこりと見上げる笑顔が愛おしかった。
何回かのバトルの後、一行は階下へ続く階段前に到着した。降りた先には転移魔法陣がある。
「俺の時はボスは大蜥蜴だったけど、今は何だろうなあ。さすがにこれは予想がつかない」
「ボスって変わるの?」
「倒したらいなくなるだろ、その後釜争奪戦を勝ち残った奴が次のボスだよ」
「へえー」
ユラが説明を続ける。
「ダンジョンをクリアすると難易度に応じて金貨が報酬でもらえる。定期的に冒険者が討伐しないとダンジョンからモンスターが溢れ出してくるからな」
成程、何故金貨が支払われるのかと思ったら、世の平和の為にモンスターを退治してもらっているからということなのか。
「よーし! じゃあボス戦頑張るわよ!」
「おー!」
ウルスラとアールが掛け声を掛けた。
パーティーは、転移魔法陣の上に乗った。
「地下二十五階へ」
ユラが言った。
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