第102話 OLサツキ、初級編二日目午後の特訓は終盤
冷凍のアルバ蜥蜴の輪切りを入手出来たお陰で、今晩のメインはもう準備オーケーだ。
地下七階の飛翔系モンスターは、蜥蜴よりも何だか簡単に倒せた。複数範囲の魔法で一撃、それの繰り返しだ。こんなのでいいのかな? さすがに不思議に思うと。
「レベルが合ってないんだよ。だからまあ、アールのテイマーの能力も判明した訳だけど。相手が弱くないと従わないからさ」
ユラが言った。誰一人怪我もしないので、ユラは昨日に引き続きただ後をついて来ているだけだ。さすがに暇なのだろう、時折遠慮なく欠伸をしている。
「つまり、わた……僕達が強過ぎるってこと?」
「そう。俺達一応ドラゴンスレイヤーだしさ、ここは初級ダンジョンだし、砂粒を最大魔法で跡形もなく消し去ってる感じかな」
「今回の目的はサツキの呪文覚え直しと、モンスター飯だからねえ」
ウルスラがけらけらと笑う。
「私は大して何もしてないけど、ご飯が美味しいから楽しいわよ」
そう言うと、サツキと手を繋いでいるスライム少女を一瞥した。スライム少女が、恐怖からかプルプルと震え出す。
「大丈夫だよ、わた……僕がついてるから」
すると、スライム少女は人相悪く笑った。うん、何とかして早くもう少し固めにしてあげたい。片栗粉とかないかな。
「どうする? 単調でつまらないって言うなら、今日は一気に地下十階まで行って早めに宴会始めるってのもありか?」
ユラが尋ねる。アールが首を傾げた。
「どういうこと? モンスターと戦わないでさっさと先に進むってこと?」
すると、ユラが憐れな生き物を見る様な目でアールを見た。
「あのさ、俺、このダンジョン来たことあるって言ったよね?」
「言ったな」
「一番下まで潜ってるから地図がある訳。分かる?」
「うん、それでそれで?」
「こいつ分かってねえ……」
ユラがあからさまに苛ついた表情をした。途端、サツキの心が凍る。この表情は、苦手だった。サツキが萎縮して上手く話せないでいると、相手はよくこの顔になった。すると焦ってもっと何も言えなくなる、その悪循環だったことを思い出す。
思わずスライム少女と繋ぐ手に力が篭った。風船を握った時の様に、むにょん、と少女の手が変形する。
「わっごめん!」
急いで力を抜く。元に戻った。やれやれだ。小麦粉でも固まるかな。
「だからさ、俺は全フロア行ったことあるの。レベル低いな、とか、ここには旨そうなモンスターいないな、と思ったら、転移魔法陣で先のフロアに行けるの。分かったか?」
「あー! そういうことね! 理解!」
ようやく意味を理解したアールが、ぴっと敬礼のポーズをとった。このポーズって万国共通なんだろうか。
「今日はもう疲れちゃったわー。ユラに賛成」
「ウルスラ何もしてないじゃん」
「ユラもでしょ」
「な、何かぼ、僕の為にごめんなさい」
「いやね、サツキの所為じゃないわよ」
ウルスラが手をひらひらさせて言った。
また、申し訳なさが心を占めた。
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