第27話 変な人と遭遇してしまったわ
「聞きたかったことがあるのよ」
「なんだ?」
「何故、学園に入学したの?」
「あぁ~。自分一人の力でなんとか強くなりたかったが、行き詰まりを感じてな」
只今、チャンバラ中よ。身体強化の魔法を使ってね。そうすると、何かしらのスキルを覚えるのよ。縮地とかね。
でも、思うのよ・・・彼らの恋愛はどうなってるよ!?乙女ゲームよ、この世界は!!何故、ナッターズ侯爵みたいに、みんな魔法バカになっていくのよ!
恋バナをしようとして聞いても、みんなナニソレ美味しいの?みたいな感じで、ナニソレ魔法に関係あるの?みたいで興味ないよ!
あ!ちょっと、待って・・・ヒューゴとフィンレー以外は貴族よね・・・もう、なんだ~みんな隠すの上手いんだから~。うん、これは張り込みが必須よね~。そうと決まったら、早速泊まり込みの準備だわ!
「ストップよ!」
「なっなんだ、急に?」
「急用を思い出したのよ。だから、帰るわ」
「おぉ、そっそうか」
ごめんなさい、戸惑らせちゃったわね。けど、重要なことなのよっ!
「では、ごきげんよう!」
返事を待たずに、パッと自宅の自分の部屋に瞬間移動をしたわ。
え~と、食事は魔法で収納してあるから、着替えと枕と布団と・・・。
「お嬢様」
ビクッとなったわ。必要な物を魔法で収納しようとしたら、突然後ろから声をかけられるんですもの。誰にも見つからずに、準備を済ませて行こうと思ってたのにね。
「もう、驚いたわ。音も立てずに部屋に入ってこないでよ。ミラ」
そう、私の専属使用人のミラが、音も無く後ろに立っていたのよ。怖いわね~。
「居ないはずのお嬢様が、何故ここにいらっしゃるのか、こちらが驚きです」
こっこれは、ヤバイヤツヨ・・・さっきの余裕綽々の怖いわ~なんてモノは取り消しよっ。怖すぎるわ!ミラの背後にゴウゴウと青い炎が見えるもの!!
「お嬢様、学園はどうしたのでしょうか?」
「じゅ、授業は終わったわ」
「そうですか。では、何故玄関から帰ってこずに、直接お部屋に居るのでしょうか?」
「ごめんなさい!!もっ戻るわ!」
「よろしいです。では、気を付けていってらっしゃいませ」
ミラが頭を下げて上げる前に、慌てて瞬間移動をして、学園の魔法研究所に戻ってきたわ。
張り込みは、学園だけにしましょう・・・。
「あれ?ルーナ、どうしたの?」
魔法研究所の部屋で、何かをしていたカーティスが私に気付いたわ。
「お兄様・・・家に戻ったら、ミラに怒られたわ」
「瞬間移動の魔法で戻ったの?」
「えぇ、瞬間移動で戻りましたわ」
「それは怒るよ。ルーナは、後先考えないんだから。でも、何故家に戻ったの?」
「それは張り・・・」
「はり?」
あっ危ないわ~。張り込みと言いそうになったわ。こんなこと理由が理由だから、とても言えることではないもの。
「なっなんでもないわ。忘れ物を取りに行っただけだわ」
「そう?」
「え、えぇ・・・」
なんとか誤魔化せたわ~。ふ~。
「・・・ちょっと、用事を思い出したから、もう行くわ」
はぁ~。隠し事していると、疲れるわね。これは、ボロを出す前に、早速張り込みに行きましょう。先ずは、『エレセイ』のヒロインである、エレノアをサーチの魔法で探しましょう。
どれどれどれ~。あ、居たわ居たわ。図書室で何かしているわね。図書室・・・そう言えば、図書室でもイベントがあったわよね?
「・・・うん、分かったよ。くれぐれも、気を付けてね」
「え?大丈夫よ。学園内だもの、そうそう危険なことは無いわ」
「僕が言っている意味は、そうじゃなくて。変なことはしないでね、と言う意味だよ」
カーティスが凄く、残念そうにこちらを見るわ。そんな風に見られるの、何回目かしら・・・。
「変なこと?そんなことしないわよ。今までもしたこと無いでしょ?」
「そっか、自覚がないのか・・・」
あら?今度は、何か遠い目をしちゃったわ。
「それじゃぁ、行くわね」
チャンスだわ!と思って、カーティスが遠い目をしている間に、部屋を出たわ。
瞬間移動で図書室に行きたいけど、魔法研究所の室内以外では使用禁止なのよね。はぁ~。仕方ないわね、散歩がてらに歩いて行きましょうか。
ふふん、ふふふ~ん。流石に、スキップはしないわよ。
かれこれ歩いて10分弱、着いたわ!図書室に!
それでは、たのもー!!
バーンッと、そんな気持ちで扉を開けたわ。
『・・・・・・』
「あっ」
「図書室の扉は、静かにお開けください。」
「もっ申し訳ありませんわ・・・」
図書室だったわよね・・・ごめんなさい!そんな目を向けないでください~。
いそいそと速歩きで、本棚の裏に隠れたわ。
ふ~。少し一息付けて、エレノアを探しましょう。
「ふっ」
ん?何かしら?誰か、鼻で笑ったわよね?私のことを笑ったのかしら?
キョロキョロと笑った声の主を探すと、高身長の男性が数冊の本を手にして、図書室の奥に居るのが目に止まったわ。
艶やかな濃紺色の髪と、サファイアのようなブルーの瞳ね。なんか、黒に近い髪色のせいか影のある感じよね。イケメンというよりは美形?種類は違うけど、ルーカス並みの美しさなのよね・・・。
「図書室では静かにね」
「ご親切に、気を付けますわ」
見た感じ、雰囲気は学生みたいだから、成人していないわよね?それにしては、声が下の腹部に響くくらい良い声だわ。その声で、優しく囁くような感じで言われたら、一般の女子はイチコロね!あ、ルーカスたち攻略対象者も彼に負けていないくらい良い声よ。一応、言っておくわ。
「お会いできて、光栄だね」
そう言いながら、近付いて来るの。彼、ハンフレイパパより大きいんじゃないかしら・・・。
「?」
私は、この人のこと知らないけど、彼は私のこと知っているみたいだわ。
彼が近付く前から感じていたけど、私と並ぶと親子くらい身長差があるわね。すっごく、幼い時に戻ったような感じがするわ。見てよ~、本棚の1段分より差があるのよ~。30cm以上かしら?
あら?光が差している所まで来たからなのかしら、雰囲気が全然さっきと違うわ。本当にルーカスとは違った穏やかな感じの、王道のキラキラな王子様みたいな人だわ。あらあら、本棚の奥が暗かったせいね、髪の色が全く違う色に見えて、私と同じ瑠璃色みたいだわ。瞳も、サファイアのような綺麗なブルー単色だと思ったら、光に当たるとオパールみたいに、キラキラと色んな色に輝いて見えるわ。神秘的ね・・・。
「噂は、良く聞くよ」
おっと!目が離せなかったわ。目だけに・・・。
コホン。え?どんな噂かしら?変な噂でなければ良いのだけれども・・・。
「そうですの?」
「ふふ」
え?なんで笑うのかしら?
「顔に出るんだね」
もう。それ、フィンレーにも言われたわよ。でも、それは置いておいて。私、とても大事な私用があるのよ。
「人を探していますの。こちらに、エレノア・フローレスさん、いらっしゃいませんでした?」
先ず、こちらが第一優先よね。
「あぁ。彼女は、先ほど君と入れ違いで出て行ったよ」
そうなの?それは残念だわ~。でも、エレノアを知っているということは、3年生かしら?見た感じ、それより上に見えるのよね。ヒューゴやフィンレーみたいに遅れて入学したのかしら?
「ありがとうございます。では、失礼しますわ」
そう、すましたのだけど、決して顔に出ると言われたからではないわよ。
「ふふ。ではまた、アリアルーナさん」
あ、また笑われたわ。それにやっぱり、私の名前知っているのね。
「はい、アリアルーナ・フォーサイズですわ。あなたの名前を伺ってもよろしいかしら?」
「あぁ、ごめん。名乗っていなかったね。私はアシェル。以後、お見知りおきを」
彼が右手を胸に添え、柔和に微笑みながら頭を下げるのよ~。それが、様になってるの~。
でも、何故名前だけなのかしら?この『エレセイ』の世界では、攻略対象者に平民がいるから、平民にも家名がある設定なのよね。だから、彼にもあるはずなのに・・・。
「家名は、今のところ秘密だよ。機会があったら教えるからね」
なにそれ~。秘密だよって、何を勿体振っているの!?
でも、何故分かったのかしら?家名を言わないってことに疑問を持ったって・・・。
「顔」
彼が自分の顔を指しているわ。
「?」
私の顔に何か付いているのかしら?触ってみるけど、何かしら付いている気配は無いわね。
「ぷっ」
え?何?吹き出すほどの物が、私の顔に付いているのかしら?
「クックックックックッ・・・」
「ちょっと。何が可笑しいの?変な物が付いているのなら、言ってくれないと分からないわ」
変な物付けて、学園の往来を歩きたくないもの。
「ごっごめんね。君の顔に何か付いている訳じゃないよ」
「じゃ、何なのよ」
むう。笑いすぎよ!ふ~って、息を吐いて笑いを落ち着かせているし~。
「本当に、顔に出やすいね」
「そこなの!?」
「シーッ。静かにね」
唇に人差し指を当てて、シーッってやるのも様になっているのよ~。美形は何をやっても素敵に見えて良いわね!
でも、そんなに笑った理由が、私の顔に出やすいことだなんて、もう!
「では、今度こそ失礼しますわ」
「うん、またね」
エレノアを探しに、さっさと行きましょう!構ってられないわ。
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