第20話 揉め事は避けて通っているはずなのに、ですわ
その後、入学式は滞りなく無事に終わったわ。
いや~、壇上に上がって挨拶をするルーカスは、カッコ良かったわ~。流石、王族よね!幼い子供のころから知っているから、立派な姿に感慨深く感じるわ。この世界では、私の方が年下だけどもね。
ルーカスも、仲間内の誰よりも飛び抜けて美しくなったのよ。正に美丈夫!という感じなの。『エレセイ』の時は王道の王子様ルックスだったのに、アンドリュー程ではないけど細マッチョになったの!脱げば凄いらしいわ。私は見てないけど、カーティスが良く言っているの。同じ訓練してるのに、二人のようにならないって嘆いていたわ。そんな自信に満ち溢れた彼は、堂々としていて風格が出てきたわ。思わず、手を合わせたくなるのよ。日本式の両手を合わせるのではなく、指を組む欧米式の方よ。神々しいわ~。
「では、新入生の皆さん!こちらでクラス分けを提示しています。確認され次第、教室に移動してください!」
その声を聞いて、わらわらと新入生の皆さんが集まりだすわ。そして、私たちもそれに続いたわ。
「リアと一緒のクラスだと、嬉しいですわ」
「私もですわ。一緒のクラスでしたら、楽しそうですもの」
ジュリアンナが、ふふふと可愛らしく笑うわ。
だけど私ったら、ネガティブなのかしら?その、"一緒のクラスで楽しい"の意味が気になりますわね・・・ジュリアンナは、エドワードに感化されないでほしいわ~。
「あ。ルーナ、リア、ごきげんよう」
「「ごきげんよう」」
ヒューゴが、私たちに気付いて声を掛けてくれましたわ。この学園は貴族が通うための所なのに、平民の彼が何故ここに居るかというと、特待生だからなのよ。平民でも飛び抜けた特技があるか、成績がズバ抜けて良ければ誰でも入学出来るの。特待生は学費はもちろん無料、更に学園でかかるお金も無料なうえ、職業の斡旋もしてくれるのよ。『エレセイ』での彼は、この学園には通っていなかったわ。でも、親にお金の心配はさせたくない!というエレノアが、担任の先生に働き口を紹介してもらって、ヒューゴの家のお店で働くようになり、二人は再会するのよ~。その『エレセイ』での話は良いから、早く彼が何故特待生になったのか理由を教えろって?それはね、私たちが魔法を教えたら貴族クラスのレベルになったからよ!あぁそれと、彼の年齢はエレノアたちと同じだけど、町の学校から編入させられ・・・いや、してきたから私たちと同じ学年になったのよ。え?いや、言ってないわよ。そんな、ナッターズ侯爵に無理矢理編入させられたなんて、私は言ってないわ・・・あっ!・・・聞かなかったことにしてね。
それでね、『エレセイ』では、イケメンだけど優男という感じだったヒューゴは、今は爽やかイケメンに変身したのよ~。体つきも、少しガッチリになったのよ。あの時の彼は、エレノアの前ではどんな辛いことがあっても、いつでも笑顔を崩さなくてニコニコしていたのよ。それなのに、この世界では嫌なことがあると直ぐに顔を出すようになったわ。言いたいことを言えるようになったのは良いけど、私たちにもう少し気を使ってくれても良いと思うわ。
「みんなで、同じクラスになれたら良いわね」
「そうですわよね」
「え、僕は遠慮したいかな・・・」
「「え?」」
「な、なんでもないです」
ジュリアンナと二人で、ヒューゴに微笑んだだけなのに何故怯えるのかしらね。
あら?提示場所が騒がしいわね。
「ちょっと!だから、なんでわたしの名前がAクラスにないのよ!!」
「ですから、この学園では実習がありますので、成績でクラス分けしています」
「わたし、王族よ!融通がきかないわね。責任者を呼んでちょうだい!」
「学園では、王族でも地位は関係ありません。皆さん同じ生徒となります」
「だから、なんなのよ!」
「あなたは、Fクラスです。直ぐに移動してください」
「ちょっと、触らないでよ!止めなさいよ!」
騒いでいた金髪碧眼の女性が、学園関係者に連れて行かれるわ。
でも、王族にあんな女性いたかしら?この世界での基準の一般的な顔立ちだし、髪や瞳の色からして、モブっぽいけど・・・。
「凄いですわね。王族であのような方、いらっしゃったかしら?聞いたことありませんわ」
「私も、聞いたことないわ・・・それにしても、激しい人でしたわね」
「ああいう女性には、関わりたくないですね」
「良かったですわね。三人ともAクラスで」
「本当だわ~。気心が知れた人が、二人いるから良かったわ」
「・・・僕は、Cクラスで充分だったんですけどね」
「「何か、言いましたか?」」
「いえいえいえ」
今はAクラスの教室に、向かっている途中ですわ。
あら?また騒がしいわね。今度は、Aクラスの教室の室内からだわ。
「どうしたのかしら?また、騒がしいですわ」
「この声は、先ほど騒いでいた女性と同じですわね」
「え?彼女は、Fクラスのはずでは・・・」
Aクラスの教室の扉を開けて3人で中に入ると、席の前列に人だかりが出来ていたのよ。
「どうかしましたか?」
「いやそれが、Aクラスじゃないのに席に居座っている者がいるんだよ」
ヒューゴが、近くに居た男子学生聞いてくれたわ。
「会場で騒いでいた女性と、同じ人みたいだわ」
「会場でも、騒いでいたのかい!?僕は直ぐに移動して来たから、それに気付かなかったよ」
私がそう言うと、男子学生は知らなかったらしく驚いたわ。
「困りましたわ・・・」
ジュリアンナが眉を下げて、頬に手を当てて言うのよ。困った顔を可愛いわ!
「さっき、Fクラスの先生を呼びに行ったから、大丈夫だと思うよ」
「収まりますかね?」
「収まってくれないと困るよ」
男子学生は、ヒューゴの問いに嘆いているわ。
「コラ!何やっているんだ!!」
30代くらいの男の先生が、騒ぎを聞きつけ慌ただしく教室に入って来たのよ。だから、邪魔にならないように、サッと避けましたわ。
「入学式で忙しいこの日に、問題を起こすな!」
先生が自分勝手発言をしましたわ!
「何をするのよ!わたしは、Aクラスになるって言っているの!」
「お前じゃ、100年経っても無理だな」
また、先生による問題発言来ましたわ!
「わたしは、王族なのよ!敬いなさいよ!!」
「この学園に入ったなら、そんなの関係無い。王族だから敬えというなら、もうちょっと王族らしくしろよ」
「なんなのよ!」
「国は違えぞ、同じ王族でもルーカスとは全く違うな」
国が違うって、この国の人じゃなかったのね。あらでも、『エレセイ』で留学生っていたかしら?
「ルーカス!?わたしは、ルーカスに会いたいのよ!遅れて来たのに、門の近くで会えなかったんだから!!」
え?遅れて来て門の近くでルーカスに遭遇って、『エレセイ』でヒロインとルーカスの出会いと同じよ・・・何故知っているのかしら?
「うるさい!!会いたかったら勉強して成績上げて、魔法の練習もして腕を上げろ!」
そんな感じで先生に引きずられて、その騒がせの元が連れていかれるのだけど、こちらを見て何かに気付いたように目を見開いたわ。そして・・・。
「あなた!悪役令嬢ね!!ちょっと、待ちなさいよ!・・・」
そのまま教室から出ていって、やっと静かになったわ。。
「あくやくれいじょう?何かしら?」
「聞いたことがない言葉ですね。なんでしょう?」
ジュリアンナとヒューゴは、『悪役令嬢』という聞き覚えない言葉に首を傾げているわ。
でも彼女、悪役令嬢って言っていたわよね?私を見たと思ったのだけど、見たのはジュリアンナの方だったのね・・・ということは、彼女も転生者なの?!
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