第8話 闇はすぐそこに

凛怜side


紅葉と一葉の姉妹喧嘩を仲裁し、落ち着き始めた頃。


俺達が席に座った時、一葉が妙なことを言ってきた。


一葉「2つの気配に関連するかどうかは分からないけど、最近裏社会で妙な噂があるらしいよ。」


妙な噂と言われ、疑問を頭に浮かべながら、

俺は一葉に視線だけを向けて聞いてみる。


凛怜「妙な噂?どんな噂なんだ?」

一葉「過激派ファミリーだけに黒ローブに包まれた謎の女が出入りしているらしい。という噂だよ。」

紅葉「それは私も聞いたことあるわ。」

凛怜「…黒ローブに包まれているのに女と断定出来る根拠は?」

一葉「声が女性のものだったかららしいよ。」

凛怜「なるほどな…。」


この裏世界において、特別珍しいことでは無い。

過激派ファミリーは色んな思惑があり、暗躍する事が常識だからだ。非合法な事や穏便派との対立に関して言えば、1番団結力があるといってもいい。


俺たちマフィアにおいて、信頼関係は築いて損はないし、俺たちマフィアが営んでいく為には、周りとの協力は切っても切れない関係にある。

これは穏便派や俺たちのような中立派も同じことで


使者をそれぞれに派遣し、計画を練り、それぞれの利益に合わせ、行動することが、マフィアの常套手段じょうとうしゅだんとも言える方法だ。

黒ローブというのが少し気にはなるし、警戒すべき事だが、妙なという言葉が付けば話が変わってくる。


凛怜「それのどこが妙なんだ?ただの噂として片付けられる代物だろ?」

紅葉「そうね、現に私達も使者を派遣したりするわ。」

一葉「その黒ローブの女はどこにも所属していないって噂だよ。だからじゃないかな?」

凛怜「…なるほど。それは確かに妙だな。」


普通、一定の信頼関係が無いと、協力は出来ないものなのだが、たびたび影は出るのに、尻尾さえ掴め無いとなると、相当な厄介事だろう。


凛怜「……少し調べてみる必要がある。 一葉、頼めるか?」

一葉「任せておいてよ。」

凛怜「紅葉は少しの間、休んでていい。」

紅葉「分かったわ。」

何も無ければそれでいいんだが、俺の直感が、それを否定する。

自分の表情が歪んでいる事が、自分自身で分かってしまう。そんな表情を見て2人は察したのか。


紅葉「…どうやら、休んでいられないようね。」

一葉「そうみたいだね。」

と、呆れ顔で2人に言われた。

凛怜「わ、わりぃ。」

どうやら、バレているようだ。妹たちに隠し事は出来ないなぁと今更ながら、思ってしまう。


紅葉「とりあえず、私はあたれるところをあたってみるわね。」

一葉「私は、探れる情報は探っておくね。」

凛怜「あぁ、ありがとうな。細心の注意を払って、行動してくれよ。何かやばいことが起きる気がしてならんからな。」

紅葉「えぇ、分かっているわ。凛怜の悪い予感は無視できないもの。」

一葉「そうだね。それで何度も助けられたからね。」

凛怜「あぁ、今いる幹部にこの事を通達。警戒し、万が一に備えろ。」

紅葉・一葉「「了解、ボス。」」


一通りの話を終えて、残りの仕事を片付けようと、俺は席を立つ。


凛怜「さて、仕事の残りやるかぁ。紅葉手伝ってくれ。」

紅葉「はぁ、しょうがないわね。分かったわ。」

凛怜「おお、ありがとうな。じゃあ一葉またな。」

一葉「うん、またね。凛怜、姉さん。」

紅葉「ええ、またね。一葉。」

そう言って、俺たちは一葉の元を後にした。


今日は仕事が早く終わるかもしれないなと呑気に考えながら、紅葉と俺は執務室へ向かっている。


黒ローブの謎の女、お前は一体何者なんだ。

いずれ、そいつの正体を暴いてやると決意し、闇への1歩を踏み出したかのような感覚を持ちながら、紅葉と共に執務室へ歩いていくのだった……。


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