フロンティアが消滅すると

 1890年にフロンティアが消滅すると、アメリカ史は大きく動き出します。


 フロンティアというのはアメリカの未開拓地域のことです。アメリカはこれまで東から西へとせっせと開拓を続けてきました。それがついに西海岸まで到達し、アメリカ全土が開拓され終わったことを、「フロンティアの消滅」と呼びます。


 これの何が困るかと言うと、アメリカ国内ではもはや、経済の新たなる市場が手に入らなくなったということです。


 そもそも資本主義経済というものは、常に新しい市場を求める傾向を持っています。列強はその欲求に押されて、他国の植民地化を進め、世界を分割してきました。

 この苛烈な競争を「帝国主義」と呼びます。

 経済問題は、帝国主義を推し進める大きな要因でした。


 さて、これまでのアメリカは、帝国主義の競争に参加してきませんでした。ヨーロッパでの争いごとには関与しないという、モンロー主義を貫いていたのです。


 しかし、それが可能だったのは、アメリカにはまだフロンティアがあったからでした。まだ新しい市場を確保できる、まだ経済発展ができる、そんな可能性に満ちたフロンティアが。


 そのフロンティアが消滅してしまうと、それ以上の経済発展が見込めなくなってしまいます。

 まだまだ発展をしていきたいアメリカは、途端に態度を一変させ、外国にちょっかいをかけるようになりました。


 例えばアメリカは、さっそくハワイを占領しました(1893年)。

 また、ヨーロッパの国と交戦して、領土を広げました。具体的には、米西戦争(1898年)でスペインに勝利し、フィリピンをはじめとした植民地を奪いました。

 中南米諸国に強引な取引を迫る「棍棒外交」も良い例です。中でもパナマ運河を管理してその開削を進めたこと(1904年〜)は象徴的なことです。

 東アジアにも何かと権益を求めるようになりました。特に中国への発言権を強めようとしました。


 フロンティアが消滅するや否や、急にこれらの行動に出たアメリカ。フロンティアの消滅は、まさしくアメリカ史においてターニングポイントとなる出来事だったのです。


 無論、それまでにもアメリカは、アメリカ西部を勝手に開拓して、ネイティヴアメリカンを蹂躙してきたわけですが……、その矛先が他国へと向いたという意味で、これは画期的な出来事でした。

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