第3話『本当の気持ちと勇気』
俺の母は悪魔のような人だ。
高校生になってから俺は強制的にバイトやらさせられ肉体労働の多い工事現場で毎日汗水たらして働いていた。
給料は全て母に取られ毎月の小遣いはほとんどなかった。
父親は俺が12の時に交通事故でこの世を去り、父が居なくなってすぐ母は仕事を辞め家で酒ばかり飲む毎日だった。
ある日俺は体育の授業で足を骨折しバイトに出られなくなったことがあった。
そんな俺に母は、『働けないあなたなんてここにいる価値もないわ』と面と向かって言いい骨折している右足を強く殴った。
俺はその日から家出してあの家には一生戻らないと決意した。
そんな母が今俺の前に立っている。
俺が黙って下を向いていると頬に強い衝撃が伝わった。
母が俺を叩いて言った。
「沢山の人に迷惑をかけて!あなたどういう神経してんの?帰るわよ」
「イヤダ……」
「あぁん?今なんて言った?」
反論ができない。
俺は日奈さんや店長にも迷惑をかけているのかもしれない。
俺の家出もここまでかぁ……
「あの、春汰君が嫌がってます。帰ってください」
「ちょっとあなた誰?私たちの問題に口を突っ込まないで」
「私は春汰君と同棲しているものです」
何も言えない俺を見て日奈さんが助けようとしてくれている。
「あなた正気?未成年と勝手に同棲していいわけないでしょ」
「このような状況にしたのはあなたではないですか?もう春汰君は帰らないと言っているんです。お引取りください」
「そうなの春汰?」
母が俺を睨みつけ言った。
あの家には帰りたくない、でも日奈さんに迷惑がかかるかもしれない。
でも日奈さんの行動を無駄にしたくもない!
「ハルくん。本当の気持ち聞かせて」
決心がついた。
俺はあの夜、日奈さんに拾われてから毎日が楽しい。
日奈さんといると今までのことを忘れられるくらい心地よくて幸せだ。
それに俺には大切にしたいと思う人ができた。
好きな人ができた。
俺はまだ日奈さんと居たい!
「俺は家には帰らない!もうあんたの言いなりにはならない!」
「はぁ?」
「今の母さんは大嫌いだ!もうあんな生活にはもどりたくないッ!」
「……」
言い切った、やっと言えた。
日奈さんの方を見ると日奈さんは笑顔で頷いてくれた。
「あぁそう」
母はそう言って店を出て行った。
「ハルくんよく頑張ったね!よしよし」
「そ、そんなにひっつかないでくださいぃ〜」
「ハル君照れてる〜」
「照れてませんって!」
あの後母は店に戻って来ることはなく、家に帰って日奈さんと謎のよしよし赤ちゃんプレーが始まった。
「ねぇハルくん」
「なんですか?」
「一生一緒にいようね」
「え?!……はい!」
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