第18話 近代史の転換点

 近代建築ビルが建ち並ぶ町並みを歩いて、レンガ造りの広場と木造住宅が立ち並ぶ旧市街地へと入っていく。


 レーマー広場へ行く手前、パウルス広場の西にある円錐状のがっしりしたレンガ調の建物がある。広場の名にもなっているパウルス教会だ。

 一八三三年に立てられ建てられた新古典主義様式の教会で、一八四八年第一回フランクフルト国民議会が開かれた場所であり、ドイツ国憲法の協議がなされたことからドイツ民主主義の象徴的な場所となっている。


「一八四八年……といえば、一八四八年革命かっ」


 サクヤは高校のときに習ったことを思い出す。

 ヨーロッパのさまざまな地域に発生し、ウィーン体制の崩壊を招いた革命であり、ヨーロッパ近代史における重要な転換点となった年だ。


 当時のヨーロッパはウィーン体制がしかれ、民主主義や民族主義運動が抑圧されていた。やがて民主主義を求める運動が高まり、オーストリアで三月革命が起きるととなりのドイツ、当時のプロイセン王国でも一八四八年三月十八日、ベルリンで軍隊と市民の大規模な衝突が起こった。世にいう、ベルリン三月革命である。

 民主主義が声高に叫ばれる中、二カ月後の五月十八日、ドイツ統一とドイツ国憲法制定を目指してフランクフルト国民議会が召集され、この国最初の憲法『ドイツ国憲法』を制作する作業が進められた。その場所がここなのだ。

 

「これより六年後、黒船が来航した日本も列強各国の影響を受けて、怒涛の幕末を経て明治維新に向かっていくことになったのか……」


 外観はたしかに教会なのだけれど、中にはいると、天井が高く簡素できれいな会議場になっていた。たくさんの旗が飾られたこの場所で、民主主義的ドイツ統一を目指した国民が集い、白熱した議論がかわされたのだろう。

 現在は教会としては使われておらず、イベント会場として使用されており、ジョン・F・ケネディがかつて演説したこともあるという。

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