22.西三河の朝3

 二〇〇五年八月八日、月曜日、早朝。


 普段よりも早くに目が覚めた透一は、掛け布団代わりのタオルケットから抜け出て起きる。


 今日はサフィトゥリと名古屋に出掛ける日だ。


 顔を洗って台所へ行くと、母親が朝ごはんの準備をしていた。


「今日は早起きじゃない。出掛けるって聞いたけど、夕ご飯はいるの?」

「……友達と食べてくるからいい」


 朝から矢継ぎ早に話しかけてくる母親の問いに、透一はまだ眠気が残ったまま答える。


 テーブルの上に置かれた食パンとソーセージ、ピーマンの炒め物を食べて、食器は自分で洗う。


 そして自分の部屋に戻ると、透一は昨晩考えに考え抜いたコーディネートの服を着た。


 濃紺色のジーンズに白と青のストライプのシャツを着てブラウンのサスペンダーを合わせ、新調したキャスケット帽を被る。最後に玄関に出しておいたデッキシューズを夏らしく履けば、雰囲気だけは立派なイケメンだ。


「行ってきます」


 めかしこんだ姿を家族に見られるのが気恥ずかしいので、透一はそそくさと玄関を出た。


 これからサフィトゥリに会いに、名古屋へ行くのだ。

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