Episode 13「延々」

「はぁ~、次から次へうじゃうじゃと」



 大体、初イベントで5000人以上が戦うなんて無理があるだろ。


 せめて鯖を分けるとか、運営側仕事しろよな。


 

「お、プレイヤー発見。……ん? あいつ、ヘッドじゃないか?」



 クソッ、もう次が来やがった。


 しかし我ながら、よく持ってる方だと思う。


 いつもいつも崇められるんだ、そりゃぁちょっとくらいは、俺は強いんだと自覚してる。


 だけど本当、流石にここまでできるとは思わなかったなぁ。


 いや、前までは確かにできなかったな。


 このツユから買った斧、『聖銀の巨斧』のおかげで俺は今まで以上に強くなった。


 最初はSRの斧というだけで舞い上がったもんだが、あの後ステータスを確認してみれば驚いた。――能力があるじゃねえか! とな。


 慌てて他の武器も確認してみれば、全て能力持ち。


 普通、超凄腕の生産職が生産や加工をしても五十個に一個、能力が付与されるかされないか、ってぐらいなのにな。


 LUK極振りだっけか。


 今回のイベントで装備やらスキルやらが明るみになれば、運営側も黙ってはいないだろう。


 だとしても、彼女が止まるとも思えない。


 いや、止まらないだろうな。


 て言うか、止まってほしくない。


 俺は、ツユが今後、どんなふざけたことをするのか見てみたくなってしまった。


 ま、本人はふざけてるつもりなんて全く無いだろうが。


 と、そんなことを考えていたら、もう終わっちまった。



「いくらヘッドでも、3対1は無理だと思っていたが……」


「あぁ、それは俺も思ったさ。ま、この斧が無ければ、お前らに会う前に脱落してただろうな」



 敵のVITを半分にしてダメージを与える。


 ははっ、思い出しただけでニヤけてしまう。


 


「そういや、ツユとレイミーはフレアと組むんだっけか。あぁ、俺も一緒に組んで、無双したかったなぁ……」



 いやいかん、これは聞く人によっては、ハーレムしたかったなぁ、なんて勘違いされるかもしれない。

 

 断じて違う。


 いや別に、ツユが凄いからつるんでるとかじゃなくて、あぁでも、切っ掛けはそうだったか。


 ああもう! 俺はツユをダチだと思っているし、当然レイミーやフレアのこともそう思ってる。ただそれだけ! やましい気持ちは無い! 


 

「しっかし、今頃ははちゃめちゃしてるんだろうな……」




◇ ◇ ◇




「もうっ、次から次へうじゃうじゃと――――『アローレイン』!」


「最初に攻めて来た時は十五人。既に六人は倒してるから、残り九人。――――『ファイヤーウォール』! ――――だけど、騒ぎに乗じて来たのが七人。これじゃぁ、きりが無いよ!」



 フレアさんの『アローレイン』で、矢が雨のように敵全体に降り注ぐ。それで、味方を攻撃し始めた人が三人いた。どうやら混乱の状態異常が効いたらしい。


 レイミーは『ファイヤーウォール』で炎の壁を作り出し、敵が寄らないように身を守っていた。


 愚痴りながらも、状況の判断やそれに対応できる行動力は凄いと思う。


 対して私は、敵プレイヤーの周りをちょこまかと動き回るだけ。


 うん、完全に装備の能力に頼り切ってるね。


 それでも、二人が死なないように立ち回れているから、まだ大丈夫。



「ツユちゃん! 麻痺が五人、混乱が六人、毒が四人、麻痺と毒の両方が一人よ!」


「ありがとうございます!」



 フレアさんの戦況報告、ありがたい。


 それにしても凄いなぁ、これだけの敵プレイヤ―全員がなんらかの状態異常をわずらわっている。


 お香×みっつと、フレアさんの弓のおかげだけど、改めて凄いと思う。


 中には、麻痺が効きすぎて完全に動きが止まって倒れている人もいる。


 そして仲間割れや、毒で倒れる人まで。


 なんかもう……凄いね。



 だから私は、注目を集めるというよりも、弱った人にトドメを刺していう感じになってる。


 これはゲーム。だとしてもいたたまれない。


 一人、また一人と葬ること五人。


 毒や混乱、二人の攻撃もあって、残り五人、3パーティーになった頃、遠くから声が聞こえた。



「おーい! こっちに強すぎるパーティーがいる! だからみんなで力を合わせよう!」



 その後に続く、十人は超えている「おーう!」と言う叫び声。



「ちょっと待ってよぉ~、またぁ~?」

「勘弁して……」



 さっきから、これの繰り返し。


 倒しても倒しても、逃げ出したプレイヤーが情報を伝えたのか、次から次へとパーティーやソロプレイヤーまでやってくる。


 だとしても、私たちが負けることは無いんだけど……やっぱり、疲労が溜まってくる。


 脚は痛いし、ナイフを握る手だって握力が弱まってきてる。


 それは二人も同じこと。


 まあ、いざとなれば、戦いの最中に毒と麻痺と混乱をばら撒いて、その中で休憩するっていう手もある……らしい。


 レイミーから言われたんだけど、それができてしまう事実があるということに、我ながら恐ろしくなる。


 でも、毒で倒れたり、プレイヤーが混乱のせいで他のプレイヤーを倒した時にも、ポイントは私たちのものになるから、それだけはありがたい。因みに、既に50ポイントを超えている。



「ツユちゃん、レイミーちゃん、第四ウェーブくらいだけど、いける? 大丈夫?」


「はい、大丈夫です!」

「いけますっ!」



 その後、私たちはゲーム内時間で一日、戦い続けた。

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