182話 シャオ・ブランシェ

「……誰だお前?」


「あぁん!? アタイを知らねぇとは言わせねーぞ!? Bランク冒険者シャオ・ブランシェ様だ!!」


 ……知らんなぁ……。

 いや待てよ……。

 聞いたことはある気もするぞ……?

 あ~そうだそうだ!

 確か、スピカの父親――大規模商会の会長が、シルバータイガー狩りのために手配してくれた冒険者だったはずだ。


 Bランクと言えば、一般的には悪くないランクだ。

 むしろかなり優秀な部類に入ると言っていいだろう。


「お前がシャオか。いかにも、俺がライルだが……」


「ふんっ! やっぱりそうかよ……」


 なにやら面白くなさそうに鼻を鳴らすシャオだったが、すぐに気を取り直して話し始める。


「……アタイのお得意様が、お前に手を貸せって言ってきたんだ……」


 お得意様とは、おそらくスピカの父親のことだな。

 約束通り、冒険者を手配してくれていたわけだ。

 俺はすっかり忘れかけていたのだが、感謝しておくとしよう。


「ほう、それは助かるな」


 しかし俺の言葉に対して、不満そうな表情を浮かべるシャオ。


「シルバータイガー狩りは稼げる仕事だけどよぉ……。きっちり準備した上で討伐するってだけでも、危険度は高いんだ。ましてや、牙を無傷で持ち帰れだなんて無茶過ぎるぜ……!!」


 まぁ言っていることはわかる。

 実際、俺も同じような意味で少しばかり困っていたわけだからな。

 ただ魔物を倒すよりも、特定部位に気を配りながら倒す方が難易度は格段に高くなるのだ。

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