178話 マナー

「立場をわきまえなさい。お前が私の先輩だったのは、昔のこと。今は雌豚奴隷なんだから……」


 そう言いながら、なおもムチを振るい始めるキーネ。

 その度に、悲痛な叫び声をあげるメスタ。


 ……おぉっといけないな……。

 このままでは死んでしまうかもしれないぞ?

 まぁそれでもいいか?


 ……いやよくないな。

 さすがに殺すのはまずい……。

 俺がせっかく村に贈呈した雌豚奴隷なのだから。


「キーネ、苦痛を与えるだけが調教ではないぞ? そろそろ次に行ってみろ」


 俺の指示を受けたキーネは素直にうなずくと、ムチを振るう手を止めた。

 そして、メスタに尋ねる。


「メスタ、今あなたが身につけないといけないのは、最低限のマナーよ。具体的には言葉遣いね。上位者である私に対しては、敬語を使いなさい」


 そう言うと、またも笑みを浮かべる。

 そんな笑みを見た途端――メスタは震え始めた。


 恐怖を感じたのか――と思ったがそうではないらしい。

 彼女の顔を見るとわかるが、明らかに激怒していたからだ。

 おそらく自分に対する侮辱として受け取ったのだろう。

 だが、その怒りはすぐにしぼんでしまうこととなる。

 なぜなら――


「あら? 何か文句でもあるの?」


 バシィイン!

 キーネがムチを床に向けて打つ。

 俺の指示を受けてか、過剰に痛めつけるのは控え始めたようだ。

 しかし、メスタにとってはその音だけでも十分に刺激的だったのだろう。

 体を震わせながら必死に口をつぐんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る