65話 堀と塀の作成

 さらに数日が経過した。

 盗賊団の殲滅は無事に済ませているのでさっさと帰ってもよかったのだが、やっておいた方がいいことが3つほどあるので滞在を続けている。


 1つ目は、盗賊団メンバーの処刑を見届けること。

 村人が変に慈悲をかけて盗賊団を逃したりすれば面倒なことになる。

 盗賊が心を入れ替えて真面目に暮らすのであれば構わないが、他の土地に逃げた奴らが犯罪を繰り返しても困るからな。


 2つ目は、キーネとメスタの調教だ。

 この2人の調教方針や主人は異なる。

 キーネは見目麗しく、主人である俺に忠実だ。

 よって、今後も俺のペットとして連れ回すつもりである。


 一方のメスタは、醜女であり性格も悪く、未だに自分の立場を理解していない。

 つまり、俺にとって価値のない存在だ。

 そこで、メスタの処遇については村に一任している。


 そして最後の3つ目だが……。


「ふむ。こんなものでいいか」


 俺はそう呟く。

 目の前には、立派な堀と塀が作られていた。

 村の周囲をぐるりと囲うように、柵を作るより頑丈なものを俺が作ったのだ。


「ライルさま。お疲れさまです。おかげで、とても助かりますよ!」


 ミルカが、俺に声をかけてくる。


「俺にとっては造作もないことだ。俺の忠実な下僕であるお前のためだしな」


 俺はそう言って、ニヤリと笑った。

 普通の村人がこれほどの塀と堀を作るならば、10人以上で1か月以上はかかってもおかしくない。

 だが、S級スキル竜化を持つ俺ならばさほど大変なことではない。


「あっ、ありがとうございます!」


 ミルカが感激した様子で頭を下げる。

 今回の塀と堀の作成は、純粋に村のためだ。

 これほどの強度があれば、盗賊団や魔物の襲撃にも耐えられるだろう。


 ミルカには竜の加護を与えてやったし、そんじょそこらの人間では歯が立たないはずだ。

 俺がこの村を離れている間に可愛い下僕のミルカが死んだりしたら少し悲しい。

 彼女の安全性を確立するために、俺が一肌脱いでやったというわけだ。


「おお……。これは素晴らしい……」


「さすがはライルさん……! まさかお一人でこれほどのものを作られるとは……」


 村長や村の者たちが感嘆の声を上げる。

 彼らはザコではあるが、この防衛設備を活かしつつミルカと協力すれば、大抵の盗賊団や魔物は撃退できるはず。

 せいぜい、俺の可愛い下僕のミルカの安全のために働いてほしいものだ。


 何にせよ、これで後顧の憂いはなくなったことになる。

 最後にメスタの調教の仕上がり具合を確認して、この村を出発することにしようかな。

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