61話 村に凱旋
俺たちは盗賊共を引き連れ、アジトを出た。
盗賊共は手や体をしっかり捕縛した上で、数珠つなぎにして歩かせている。
足だけは自由にしているので、先導する俺たちに付いてくるぐらいは可能な状態だ。
20人ほどいるので、後ろの方の奴がスキを突いて逃げても気づかないようにも思えるかもしれない。
だが、その心配は不要だ。
俺の探知スキルなら、集団から外れた者がいないかを把握できる。
逃げ出した者がいれば、俺の身体能力や飛行能力ですぐに連れ戻せるし、魔法で狙い撃ちにして殺すことも可能だ。
そもそも、手を拘束された状態で森の中を逃げ回ったところで、魔物に遭遇すれば命はない。
どう転んでも、もはや盗賊たちに未来はないのだ。
ま、盗賊たちの件はこれぐらいとして……。
「おい、さっさと歩けよ」
俺は、前を四つん這いで歩いている2つのケツを蹴りつける。
「ぷぎぃっ!」
「ふごっ!」
2人は豚のような悲鳴を上げた。
キーネとメスタだ。
彼女らは、全裸に首輪だけを嵌められている状態。
しかも、口の中にボールギャグを噛まされ、鼻にはフックを掛けられている。
まるで奴隷か家畜のように、人間扱いされていない有様である。
首輪からはリードが伸びており、俺が手に握っていた。
「ふん。情けない格好じゃの」
リリアが、呆れた様子で言う。
「まったくですね。しかし、罪人にはお似合いの姿でもあります」
アイシャも同調した。
キーネとメスタに対して、酷い言い様だ。
まあ、無理もない。
彼女らは、冒険者ギルドや依頼主のミルカの指示に従わず勝手に行動して、挙句の果てには盗賊団に敗北した愚か者なのだから。
「こらっ! ちゃんと歩けっ!」
俺は再度、彼女たちの尻を蹴った。
「ぶひぃいっ……!」
「ぐぎいいっ!」
キーネとメスタが、苦しそうな声を上げる。
「ふふふ……。いいザマです……」
ミルカが満足げな表情でそれを見ている。
そうして、俺たちは村まで向かっていくのだった。
●●●
村が見えてきた。
盗賊団のメンバーの半数以上を生け捕りにし、残りは殺害。
そして、かつて討伐依頼に失敗し囚われていた女性冒険者2人を連れての凱旋である。
村の入口に入ったぐらいのところで、数人の村人がこちらに気づき遠巻きに見てきた。
少しして、慌てた様子の村長がやって来た。
「おお! お帰りなさいませ! それで、そいつらが?」
「ああ。そうだ。盗賊団のメンバーだよ」
俺はそう言って、数珠つなぎになっている盗賊たちを指差す。
「こいつらは……。確かに、何人かは見覚えのある顔です」
「だろうな。この村を襲った連中だからな」
「…………」
村長は無言になる。
そして、拳を強く握りしめ、怒りに震えている。
ミルカと同様、親しい者を殺されでもしたのだろうな。
他の村人たちも同じだろう。
ここは彼らの怨嗟を取り除くために、俺が一肌脱いでやることにしようか。
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