白雪姫の身体を洗う

「本当に俺が洗うの?」


 水着姿とはいえ、姫乃の身体を見ただけでドキドキする。


 そんな中で上手く身体を洗えるか不安だった。


 誰しも初めてすることには緊張するものだ。


「はい。タカくんに洗ってほしいです」

「わ、分かった」


 耳元で甘く言われては断ることなんて出来ないし、恥ずかしくても洗ってあげたくなる。


 隆史は手にボディーソープを馴染ませ、後ろを向いて座った姫乃の背中を洗っていく。


「んん……」


 やはり背中が少し敏感らしく、甘い声が漏れている。


 背中など見る機会があまりないからハッキリと分からないが、自分のと違って姫乃の背中は白くて綺麗で、そして物凄く柔らかい。


 本来そんなに柔らかくないはずの背中が柔らかいのは不思議だ。


 女の子の身体はどこもかしこも柔らかい。


 ビキニの紐が解けないように気をつけながら丁寧に身長を洗っていく。


「タカくんに洗ってもらうの気持ちいいです。もしかして式部さんで慣れてます?」

「いや、姫乃が初めてだよ」


 小学生の時ならともかく、思春期になってからは姫乃が初めてだ。


 そもそも麻里佳はこの家でお風呂に入らない。


「こういうのって同棲カップルがすることなんだろうね」

「ど、同棲……」


 つい思ってしまったことが口に出てしまうも、言ってしまったらもう遅い。


 背中を向けているから姫乃の顔は良く見えないが、恐らくは真っ赤にしているだろう。


 同棲バカップルはもしかしたら裸かもしれないが、隆史には難易度が高くて恥ずかし死する。


 そもそも付き合ってもいないが。


「そうですよね。私たちの関係でこういったことは普通しないですよね」


 少し悲しそうな声だった。


「ごめん。嫌じゃないんだよ。こうやって一緒にお風呂に入ってくれるくらい信頼してくれるのは凄く嬉しいよ」


 嫌じゃないという証拠を見せるため、隆史は姫乃の手に自分の手をそっと重ねる。


 好きな人とお風呂は恥ずかしいものの、嫌ではなくてむしろ嬉しい。


 だって幸せを感じることが出来るのだから。


「良かったです。じゃあ、前もお願い、します」


 クルリ、と姫乃がこちらを向く。


(いよいよ来てしまった)


 背中だけならともかく、前も洗うとなると本当に難易度が高い。


 特に水着によって胸が強調されており、どうしても目がいってしまう。


 とうやら男の本能には逆らえないらしい。


「む、胸は自分で洗いますからね」


 視線に気付いたのか、咄嗟に姫乃は自分の手で胸を隠す。


「分かってるよ。ごめん」

「いえ。他の人なら視線だけで嫌な気持ちになるんてすけど、タカくんの場合は、その……嫌ではないです」


 好きな人効果だろう。


 他の人にされたら嫌なのことでも、好きな人になら許せるというのがある。


 実際に麻里佳は異性と手を繋いだりしないが、弟として好きな彼女は隆史とだけ手を繋ぐ。


「だからその……前も洗ってください」

「わ、分かった」


 胸は自分で洗うとのことだし、泡立っている手を姫乃のお腹に当てて洗っていく。


 余計な脂肪が一切なくてクビレがあるのにも関わらず、お腹はとても柔らかい。


「ひゃん。くすぐったいです」


 お腹を洗われたら誰だってくすぐったいだろう。


「ご、ごめん」


 恥ずかしくて謝るも、お腹を洗うのも止めることが出来ない。


 好きな人のお腹など触る機会はあまりないのだし、もう少し触っていたいのだ。


「大丈夫です。水着で隠れてないとこなら、洗ってもいいですよ?」


 つまりは太ももの付け根まで洗ってもいいことになる。


「流石に恥ずかし過ぎるんだけど……」


 お腹だけでも恥ずかしさはあるのに、太ももとかも洗ったら本当に恥ずかしさで失神してしまう。


 キスは出来たが、手で洗うのは難しい。


「タカくんは式部さんと一緒にいたのにうぶですね」

「一緒にいてもこういったことはしないからね」


 麻里佳の部屋着は露出が高いから太ももを見る機会が多かったが。


「じゃあ、私が初めての……相手になるわけですね」

「な……」


 初めてという言葉に心臓が反応し、さらに鼓動が早くなった。


 身体が熱くなっていくのを感じる。


「じゃ、じゃあ足も洗うね」

「は、はい。お願い、します」


 座っている姫乃が右足を前に出してきたので、隆史は恥ずかしい気持ちを我慢したまま洗った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る