第22話 因果応報
大阪に本拠地を置く『
「最近、忌々しい武装暴力団が、この東京に勢力を拡大させているな。この間もうちの組の若い衆が何人も血祭りにあげられておりますわ」
「『ミリオン』などと戯けた名前を付けて、いい気になりやがって……!」
「その『ミリオン』ですけど興味深い話を耳にしました」
「どんな話ですか?」
「『ミリオン』は女が首領をしているって噂ですわ。その首領があの
「海蛇諒?あの海蛇財閥の海蛇諒の娘が首領をしている?」
「ええ。どこぞの姐さん気取りですわ」
「今すぐに『ミリオン』の奴らを血祭りにあげないと腹の虫が収まらないな」
「下っ端を殺した所でトカゲの尻尾切りだ。ならば、いっその事、その女首領を
「『ミリオン』にとっては頭目と同じだ。我が『鳳龍会』に例えるなら
「我々の世界の人間なら殺すのもわかりますけど、表の世界の人間、ようは
「どうかね〜?下調べしたけど、『ミリオン』が集会に使っているあの酒場は、筋の者が使う場所だったぞ。
「名前は?その酒場の名前」
「小洒落た名前だ。『ミリオネア』。奴ら『ミリオン』の隠れ家として申し分ない名前だね」
「決まったな。その女首領……名前は?」
「
「フフッ。そこで海蛇諒を
彼らは密かに海蛇美咲を写真に収め、彼らはテーブルの上にそれをばら撒いた。
そこには確かに美咲の姿が写真に収められていた。様々な彼女の姿が撮られている。モダンガールの美咲や私立魔天学院に通う大学生としての美咲。街角で女子とカフェで話す姿。一挙一動を撮影されていた……。
『鳳龍会』はこの見た
時は流れて10月の半ば頃。
その日は唐突に訪れた。
街角の街路樹も徐々に黄色や赤に染まる頃に、よりにもよって私立魔天学院にて、その事件は起きた。
その日も海蛇3姉妹達は魔天学院にて、それぞれの時間を過ごしていた。
美咲は『ミリオン』の集会場所の酒場『ミリオネア』にて、少しずつ戦力を集めた。それに伴い密かに銃火器などの購入を裏の筋からしている。
しかし、そろそろ手持ちの金では足りなくなってきた。美咲は千秋が貯めている金庫の金を手に入れようと画策する。千秋が違法薬物で儲けた金はかなりの額になっている。今の日本円に換算して、1億はくだらない。それを何処かの山中に隠している事は調べがついた。
後はどうにかして、南京錠の鍵を手に入れなければならない。千秋の性格では自分自身で持っている可能性は高い。彼女は四天王でさえも金の在処だけは教えていないのだ。金に執着するなら教える訳がない。
折しもこの日はそんな海蛇3姉妹の陰謀も渦巻く頃合いだったのだ。
彼女らがリムジンに乗る瞬間だった。
「死ねーっ!海蛇!」
彼女らが叫び声をあげるその前に突然、『鳳龍会』の鉄砲玉達が拳銃を乱射して襲ってきた!
鉄砲玉共は全部で5人の男達。彼らは手にした拳銃で片っ端から仕留める為に乱射する!海蛇諒は実はボディガードを頼んでおり、自分の娘達を守るように雇っていた。
彼らが海蛇3姉妹達の盾になるように身を呈して守る。リムジンは恐ろしい数の銃弾を浴びてガラスが次々と割られる。
その光景を観た生徒達が警察官を呼ぶようにある者は先生に伝え、ある者は交番に駆け込む。
5分後には警察官がきて、彼ら鉄砲玉達は急いでその場から逃げ出すか、捕まるかになったが、海蛇3姉妹達は恐ろしい恐怖を刻んでしまった。
幸い、海蛇3姉妹達は無傷だったが、ボディガードの数名は銃弾を浴びて帰らぬ人になってしまった……。
諒はこの連絡を受けて愕然とする。
「美咲!千秋!夏美!無事か!?」
「お父様!」
「お父様…怖い!怖かったよぉ!」
「お母様!怖いよぉ!あんなので襲ってくるなんて…!」
夏美と千秋は諒の胸に抱かれ泣いていた。
美咲は母親、
海蛇3姉妹が何者かに襲われたらしい。白昼堂々と。その夜には海蛇家に警察官もきて、状況報告と事務的な事情聴取もされた。
海蛇諒はそこで一体、何処の誰が娘達を襲ったのか警察官に喰ってかかるように問い詰めた。
「一体、誰が娘達を殺そうとしたのです!?何処のどいつですか!?」
「逮捕した奴らに尋問したら奴らは『鳳龍会』の名前を出してきました。奴らに雇われた鉄砲玉だとか……」
「『鳳龍会』ですって?あの『鳳龍会』ですか?」
「はい。大阪に本部を置いている『鳳龍会』の鉄砲玉です」
諒は即座に気付いた。
冨岡雅春だ。奴ら『鳳龍会』に口添えして娘を殺そうとしたんだ…!
あの男……!!
腹わた煮えくり返るような怒りが湧いてきた。しかし、確証がない。それが更に諒の怒りに拍車をかけた。
妻の美雪はそんな諒を
諒は余りの怒りでかえって冷徹になり、そして警察官が帰った後、妻の美雪に言った。
「海蛇財閥の力で奴ら『鳳龍会』を潰す」
「悠長な事は言ってられない。奴らを潰して吐かせる。冨岡商事との関連を!」
「冨岡商事と関連があったらどうするつもり?諒?」
「殺す。若しくは永遠にどの面下げて来られないように「社会的」に抹殺する…!」
「殺す……って。けして血を流さないのが、あなたの主義でしょう?それに反するの!?殺したりしたら、今度はあなたが警察に捕まるわ!海蛇財閥はそうなったらなくなってしまうわよ!」
「なら…どうしろというんだ?美雪?このままではいつまた、『鳳龍会』の鉄砲玉が飛んで来るかもわからない!ボディガードだっておいそれと見つからないのはわかるだろう?!」
「
「少し冷静になりましょう。諒。こういう時こそ怒りで行動を起こすのはまずいわ」
「俺は至って冷静だよ!」
着流し姿の諒は独特の両眼を怒りで燃やして、妻を睨んだ。ソファから立ち腕を組んで。
美雪はそんな諒に彼女も深い藍色の瞳を冷徹にして否定した。珍しく怒鳴る。
「いいえ!今のあなたは頭に血が昇って判断力が低下しているわ!こういう時こそ、氷のような冷静さが必要なのよ…!」
「君は何とも想わなかったのか?!実の娘を襲われて?!」
「何とも想わなかったとは言わないわよ!悔しかったわ!悲しかったわ!何より!私も殺してやりたいと想ったわよ!ええ!正体が明確に判っていたらそれこそ八つ裂きに…!……でも…!」
「……それをしたら……あなたも悲しいでしょう?愛する人が殺人者になるなんて……!」
「諒は私を何とも想わないの?そんな殺人者になった私を見る事に……何にも?」
「……」
諒と美雪がいる夫婦の部屋は暫し重い沈黙が流れた……。
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