第12話 真実からは逃れられない
「入っていいよ」
私はユリウスの言葉にびっくりする。
「失礼します」
そんな私のことなんてお構いなしに扉を開けた兵士。扉の向こうには兵士が3人いた。私とユリウスの年齢を足したのと同じくらいだろうか。3人とも身長などの体格は異なっていたけれど、幾たびの死線を超えてきたような逞しさと言うか貫禄があった。しかし、先ほどから声を出していたであろう真ん中の男は、茶色のヒゲをフサフサに蓄えていかにもな顔をしていたけれど、ユリウスを見ると一瞬、泣きそうな顔になった。
「ユリウス・・・大臣」
「もう、来たのかい。ダグラス、ベータ、ホルン」
どうやら、この3人はただの兵士・・・という訳ではないようだ。ユリウスは3人の名前を呼ぶと、3人とも嬉しそうな顔をした。ただ、ユリウスは内政を司っていた大臣だったはず城を守る衛兵にしては3人とも屈強過ぎるし、私は何度も城に足を運んだけれど、この3人にお会いしたことがないと思う。
「さて、用件なんだい?」
ユリウスはそう言った。私はユリウスが呼んだのだと思ったけれど、どうやらそうではないらしい。
「ユリウス様、どうか城にお戻りください。陛下が危篤です」
「それは・・・飢饉のせい?」
ユリウスに見惚れていたかのように見ていた3人の兵士が私を見る。ギロっとした6つの目は怖かった。
「メーテルが怖がっているよ、3人とも。それに安心して。王は元から体調がすぐれていなかったんだよ。だから、君が心に病む必要はないよ」
「でも・・・」
「・・・」
3人の兵士は何も言わずに見ている。私のやった行為が少なからず王の心の負担になったはずだ。
「まぁ、飢饉に関しては大丈夫だから、安心してメーテル。他国に手紙を書いて、そろそろ食料が届いて行くはずだから。キミは何も心配しなくていい」
ユリウスは一番肝心なことから目を背けているような気がした。
「ねぇ、でも私は国王陛下のことが心配よ?」
「・・・」
(ねぇ、ユリウス。なんでそんな顔をするの?)
それを見守る。私と3人の兵士。
「僕は・・・行かないよ」
私は心の中で「えっ」となった。
「どうしちゃったの、ユリウス。いつもの貴方らしくないわ」
子どもっぽい、わけじゃないんだけれど、私はいつも理知的なユリウスがいじけている子どもに見えてしまった。
ユリウスは下を向いて何も答えてくれない。
私は不安にかられると、同時にどれだけユリウスが自分の精神的支柱になっていたかを実感する。
「我々からもお願いします。ユリウス王子」
ちょっと、タレ目でぽっちゃりした兵士のホルンが喋ると、ダグラスがホルンへ肘うちをする。
私はさらっと流していたけれど、ダグラスがホルンを注意しているのを見て、何が変なところが無かったか思い返す。
(えーっと・・・『我々からもお願いします。ユリウス王子』・・・我々・・・お願い・・・ユリウス・・・王子・・・ん?ユリウス王子?)
「ええっ!?」
今日が始まってまだそんなに経っていないのに私は驚いてばかりだ。
しかし、この事実が1年も止まっていた私たちの時間を再び動かす―――
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