その辺りの都合を考えないところとかは、さすがに支配階級だな

ツフセマティアス卿のいるこの隣国が、どうしてファルトバウゼン王国の同盟国なのかが分かる気がした。けっこう近いものがあるんだ。だから理解も早い。


もちろん、同盟国だからってみんな同じような感覚を持ってるとは限らない。ただ、この辺りは距離も近いし気候も似てるしずっと昔から当たり前のように交流してきてたからまだ近いんだろう。


「明日からは、我がブラドフォンセス国王陛下にこの度のことを報告しに行かねばなりません。特使のキラカレブレン卿はもちろんですが、できればカリン・スクスミ殿にも陛下に会っていただきたい。まことに勝手な願いだが、聞き入れていただけるだろうか?」


「分かりました。私のような者でよろしければ、説明させていただきます。ですがその前に、今回、被害に遭った農家の方々に畑に掛けられた呪いの解き方を伝えないといけません。陛下にお目通り願うのはそれからでもよろしいでしょうか?」


「おお、そうでしたな。では、私とキラカレブレン卿が出立した後を追ってきていただければ助かります。家の者に送らせましょう」


とそこまで話した時、キラカレブレン卿が話に加わってきた。


「そのことでしたら、農民はそもそも朝も早いですし、明日の出立前に集まってもらって早々に済ませればよいのではないかと」


との申し出に、ツフセマティアス卿も、


「確かに。では、明日の早いうちに集会所に来るように命じましょう。今から使いの者を出します」


って感じで簡単に決めてしまった。


そんな、朝一でここの集会場に集まらせるって、それじゃ家は夜明け前くらいに出ないと駄目な人も出てくると思うんだけど、その辺りの都合を考えないところとかは、さすがに支配階級だなと、見ていて感じてしまった。


決して悪辣な人じゃないという印象はあっても、向こうの人間とは感覚が違うなとも実感する。まあ向こうでも何百年か前まではこういうのが普通だったんだろうけどさ。


ここで私の感覚で口出しするとむしろややこしいことになりそうだと思ったから、敢えて何も言わなかった。ただ心の中で、


『農家のみなさん、ごめんなさい』


と思っただけだ。


でもそうやって大変な思いをしてもらうだけに、きちんと伝えないといけないと思った。間違って伝わらないように、丁寧にね。


そして翌朝、集会所には、早朝にも拘らずたくさんの人が集まってた。近隣の農家のほぼ全員が集まってたという話だった。


「こうして朝早くから集まってもらったのは他でもありません。皆さんの畑に掛かった呪いを解いていただく方法を、お教えする為です」


と言葉を発した私を、皆は真剣な目で見ていたのだった。


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