第95話 ホルムスの住人

黒猫のわたしは近くで見守ってるわ。


抱き合う親娘。

ライールさんとエステルちゃん。


「父さん、もういいでしょ。

 他の護衛団の人も居るんだよ。

 そろそろ恥ずかしいわ」


「あ、ああ、ああ。

 ごめんな」


そう。

周りの護衛団の人たち。

倒れて呻いていた戦士たちも復活して来ているわ。


元凶、目だらけの魔物ダェーヴァはもう倒されてる。

わたし、エステルちゃんのコトにかかりきりだったから、良く分かってにゃいけど。

多分、あのネコザムライがやったのね。

それ以外考えられにゃい。


ライールさんはやっとエステルちゃんから手を離して。

エステルちゃんも立ち上がってる。



「父さん、ちょっと訊きたいんだけど……」

「なんだい、エステル?」


「わたし、ルドラ神の加護を受けたの。

 父さん、ルドラ神ってどう思う?」


「ルドラ……

 たしか風の神じゃないか。

 船乗りが良くお祈りしてるぞ。

 スゴイな、エステル。

 そんな神様の加護を受けるなんて。

 さすが、俺とヘレーナの娘だ」


「……父さん、エウロペの人は……

 神様は一人だけなんでしょ……」


「あ、ああ、イェホヴァ神な。

 でも父さん、もうとっくに交易都市ホルムスの住人だからな。

 イェホヴァの教えなんて忘れちまったよ。

 それよりルドラ神が、エステルの神様だと言うのなら。

 その信者になるぜ。

 さっそく今日にでも神殿にお礼を言いに行くぞ。

 エステルを助けてくれてありがとう、ってな」


「そう、そうなんだ!

 あはっはははは。

 そうだね、父さんがそんな信心深いワケ無いよね。

 あははははは」


「なんだなんだ、なに笑ってるんだ?」


「なんでも無いよ」



うん。

そう言う事なのね。

エステルちゃん、ライールさんから気持ち悪いと言われたワケでもにゃんでもにゃい。

ただエウロペのコトを勉強していた。

エウロペの人からは他の神々はバケモノのように気持ち悪く見える。

そこで、そんな一文を発見したんだわ。


ライールさんに確かめられればいいんだけど。

ライールさんはにゃかにゃか帰って来にゃい。

頭のにゃかで不安が増大しちゃったんだわ。


頭のいい子や、イロイロ考えてしまう子の方がそんなワナに陥りやすい。

自分で自分の考えた不安に圧し潰されそうににゃってたのね。

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