その6 危険な瞳

第71話 湿地帯

さて、黒猫のわたしよ。

エラティ隊長率いる一番隊の人と一緒に泉に向かっているの。

この辺の地面は嫌にゃカンジ。

湿ってるの。

高い木はもう少なくて、背の高い草が生えてる。

草で地面が見えにゃくて、足を出して体重をかけたら沈み込んじゃう。

湿地帯ってヤツね。



「わ、わわわ、沈む」


「大丈夫か?」


「大丈夫じゃねえ。

 助けてくれ」


「みんな、手を貸してくれ。

 引っ張り上げるぞ」


護衛団の人たちも苦労してるわね。


そのにゃかわたしは草の上を軽く跳んで行くの。


見るとわたしとおにゃじ様に身軽に跳んでる人影がいるの。

やっぱり。

エラティ隊長ね。


「みんな、草の上を移動すればいいんだよ」


「ムリっす」

「エラティ隊長、俺たちじゃ草の上に乗るなんて不可能ですぜ」


「違うよ。

 草の根元。

 草の根元を踏むようにして歩けば沈まない」


「ホントですかい」

「ああ、なるほど」


にゃーんて歩くのがやっとの一番隊の人たち。

でも魔物は待ってくれにゃい。



「なんだ?!」

「コイツ、泥の中に隠れてたのか!」



巨大な獣の影が戦士を襲うの。

戦士たちは足場が悪いから上手く避けられにゃい。


草に隠れて見守ってるわたし。

助けてあげたい気持ちも有るけど。

あまり目立つわけにもいかにゃいしにゃー。


「コイツは、タウエレト?!」

「もっと南の方にいる河馬の魔物ダェーヴァじゃないか!」


「わぁっ! 来るな!」

「来るな! 来るなー!!」


大きいカバの魔物。

体当たりを喰らうだけで、戦士たちはブットばされる。


槍を持った男が河馬の顔に攻撃を当てた。

やるじゃにゃい。

アレってばサイラスかしら。


喰らったタウエレトは怒ってる。


VVVOOOOOOOOOWW!! VVVOOOOOOOOO!!


大きな口を開ける。

中からは巨大な牙。


サイラスに向かって走るの。

カバだにゃんて思えにゃい速度。


逃げようとするサイラス。

だけど、湿地帯に足を取られる。


サイラスが目を閉じて、やられるのを覚悟した瞬間。


上空から振って来る銀の光。


VVOOOOOOWW!!


タウエレトの胴体に刃が振り下ろされる。

ダマスカスブレード。


上空から魔物を攻撃したのは、勿論エラティ隊長だった。

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