第55話 ボーイフレンドでA、恋人でB

「カズくんは知らないか?紫苑の親友で、ちょっと下ネタが好きな変な子なんだけど、美人だよ。わたしの方が美人だけどね」

「知ってる、早乙女が美人なのは」

 また、適当に言ってしまった。

 どうも、紫苑の事ばかり考えてて、早乙女の話が頭に入って来ねーな。


「うふふふふふ、ヤダ!」

 バシッ!

 肩がちょっとやられたぞ、コラ!

 っとかは言わず、ニコッと笑う。


「あははははは、早乙女は可愛いな」

 反射的にいつものパターンで褒めちまったよ。


「もう、そればっかり。ね、紫苑、わたし達、ラブラブでごめんね」


「えっと、ごちそう様!もう、なんか奢って、カズトくん」

(この2人、もうこんなに息が合ってるんだ!デートの時、初キスって、ホントなんだね!なんか、ただの一回のデートでこんなになる香織って、釈然としないわ。あの香織だよ!やはり、このヒト、何かあるんじゃない?香織をこんなにして!見極めてあげる!アナタがどういう人なのか!ふふふ。なんか、あの事って嫌だったけど、護道君とかじゃなくこのヒトと二人だけの秘密みたいに、って、わたし楽しんでる?)


「じゃあさあ、あそこ行かない?」

 早く行かないと、久美子が帰ってきたら面倒だ。

 そして、早乙女がいるけど、お前との勝負はそこで第2ラウンドだ!

 今度こそ、勝負をつけてやる!


「あそこ?」(紫苑)

「早乙女が好きなカフェ」

「そうね、今日だと・・・」

 何か調べる早乙女。


「えっ?どこにあるの?」

(そこに、デートの時に行ったって事ね!なんで、そこに行かないといけないのかな?わたし、このままマックでも良かったのに。お金に余裕があるのかな、護道君と同じでこのヒトも?)


「ここから近いから。なっ?早乙女!」


「えっと、わたしも奢ってもらえるのね?」

 はあ?お前の上目遣い、使い勝手が良いようだな!


「そ、そうだな・・」

 そういうの、ちゃっかりし過ぎだろ?

 コイツの家、デカかったし、金持ちのハズだがな!


「やったーー!行こう行こう!」

 これだよ、この女・・可愛いぞ、ちくしょうめ!

 オレはフライドポテトの残りとかを早乙女にやった。

 だって、オレは久美子の手つかずのハンバーガーを食べるんだからな!

 紫苑がオレの方にいつの間にか、移動させたヤツだよ!


「えっ?いいの?ポテト?」


「ああ、ちょっと食べたけど、良ければ」


「そういうの、大好物だから!」


 えっ?どういう意味だ?

 まあ、そういうのがこの不思議動物だから、スルーだ!


「もう、香織ったら。ちょっと、そんなことカズトくんの前で言うなんて」

 ダメだわ。

 この子、素の状態になってる。

 こんな香織に誰がしたのよ、くん!!


「えへへへへへ」


 オレは、取り合えず、ハンバーガーを黙々と食べ、紫苑と早乙女がしゃべりながら食べ終わるのを眺めていた。


 コイツ等、やっぱ、可愛いな。

 じいちゃんは、二人とも恋人になれって言ったけど、そんなの許されるのか?

 特に、紫苑なんか、いろいろと言いそうだし、早乙女も嫌なモノはイヤって言いそうだし、どうしたもんだか。


 まあ、二人と仲良くしたいって事で、いいよな、今は。


 でも、紫苑、お前の本心がわからん。

 早乙女も、なぞのところがあるし。

 まずは、そこからだ。


 それにしても、仕方がねーな。

 奢りとか。

 奢りとか!


 奢ってって、可愛い女子に言われたら、つい奢ってしまうタイプなんだな、オレって。

 心が弱い。

 でも、わかった。

 いろいろと経験をして、学習するんだ。

 そして、対処できるようになってくると、心にも余裕が出来て、それなりに心が強くなるはずだ。


 そもそも、女子が怖かったオレが、ここまで話せるようになってるのが奇跡だよ。

 だから、必要経費ってヤツだよな、じいちゃんが良く言ってる。


 オレは、ばあちゃんからデート用にもらったお金がまだあったから、それを使う事にした。


 ホントは、本とか、牛丼に使いたかったんだけどね。



 そして、そのお店に行った。

 店内は、わりと空いてる。


「わたし、『ボーイフレンドと休日』のAで、ホットココア」(紫苑)


「じゃあ、わたしは、『恋人とのロマンス』のBで、ホットミルクティー」(早乙女)


「オレは、コーヒー、ホットで」


「ボーイフレンドでAのかたは、こちらから!恋人でBの方は、こちらから、ケーキをお選びください」


 2人は、それぞれ選ぶ。

 店員、なんかそこ省略したら・・そうか、それが狙い?

 でも、二人とも、そんなに気にしてないけど、オレが気になったわ!

 店員がオレを見る視線が、何となく怖いし。


 しかし、紫苑とボーイフレンドか?

 でも、それって、友達以上の意味だよな?


 たしか、ここのは、名前で選んだようなことを早乙女は言ってたな。

 だったら、紫苑はボーイフレンドが欲しいのか?

 そんなわけねーか。

 でも、オレでは、ダメか?

 クソッ、よくわかんねーや、紫苑が何考えてんだか。

 早乙女は、まあ、いつもの感じだけどな、恋人選んでるし。


 それにしても、じいちゃんって、何人も付き合ってたことがあるような?

 そこ、今度聞いとこ!


 


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