第34話

「うぷぅ。」

「ほら降りる駅だから立って。」

「御炉路ロ炉路ロ(オロロロロロロ)」

「大丈夫ですからゆっくり降りてください。」


見かねた駅員が運転室から出てきて電車から降りるのを助けにきた。

今ではそう珍しくもない女性の車掌さんだった。


「彼女さん大丈夫ですか。相当電車酔いしているようですが…普段電車には乗られないのですか?」

「何でも今日乗るのが初めて見たいで小さな揺れに敏感な体質なのかちょっと解らないです。」

「とりあえず駅のベンチまでお連れいたしますね。」


女性を持っていて思うのも何なのだがミウスさんはそこそこ体重があって重い。

異世界で足腰を鍛えているつもりでも1人だと腰に来るくらいには重かった。


「私どもも日々安全運転とお客様にリラックスできるような運行をここら掛けているがまだまだ至らぬようでして申し訳ございません。」

「いえいえ車掌さんが悪いわけではありませんよ。」

「では私は仕事に戻りますので彼女さんの看病頑張ってくださいね。あ、でもオオカミになってはいけませんよ。いくら彼女さんがあなたのことを大好きとはいえオオカミさんになるのは高校を卒業してからですよ。高校のうちは節度あるお付き合いくらいがちょうどいいですから。」

「彼女じゃないですよ。」

「まあまあ照れなさんな。」


照れてるわけではないのだが車掌さんは有無を言わさず去って行った。


「ふう、とりあえず一安心かな。」


先ほどまで某物質を出していたミウスさんは疲れたのか就寝している。

呼吸のリズムの良い熟睡段階に入っている取れる穏やかな眠りに入っている。


「でも寝顔だけは可愛いんだよね。」


突進だけされなければ普通の女の子と変わらない。

まだ何が醜く美しいかを知らない無垢な少女と言ったところか。


「…………それで、いつまで見ているのかな。」


異世界に行ったせいか見えないものまで見えるようになってきた。

電車から降りてからずっとこちらを観察するモノが居た。

猪八戒に近いイノシシを擬人化した容姿をしていた。

猪八戒と違うところは手に持っている武器が手裏剣という暗器を用いていること。


「◎△$♪×¥●&%#?!」

「人の言葉を知らない?」


意味すら伝わらないその言葉を口にする唇からはヨダレを垂らしこちらを見ていた。


「◎△$♪×¥●&%#?!&$#」


そのままこちらに手裏剣を手に取ったまま襲い掛かってきた。

ちらりと駅に他に誰も居ないことを確認したのち


力は骨より発し勁は筋肉から発せられる意味を体現した技を仕掛けた。


「♪×¥●&%」


猪八戒モドキは砂と共に崩れ去った。


「ミウスさんそろそろ起きて。俺が帰れなくなるから。」

「………ん…?…κάπρος(イノシシ)……?…Ας φάμε απόψε(今晩の夕飯にしよう)」


砂になったはずの猪八戒モドキはミウスさんが手を差し出した途端にもとの形状を形作りスーパーの精肉コーナーに出てくるような生肉に置き換わっていった。


「Εξασφαλίστε το αποψινό δείπνο(今晩の夕飯、確保!)」

「それ、食べても大丈夫なの?」


スーパーの肉になったのだから食べる気満々にしか見えなかった。


「…こ……れ……悪霊…多分……イノシシ……ベース……刃物……拾って……人間…に……殺さ…れ…た……成れの…果て……。」


上手く説明しづらいのかスマホの画面から見せてくれた。


その昔イノシシが悪霊になったもので霊とのかかわりのあるものなら美味しく頂ける。

主な生息地は異世界だがその昔の地球では異世界以上に霊の顕現率が高くそれを排除しきれていないらしい。

俺もそれを見たり触れたりすることができるのは神などと関わったせいとのこと。

また霊を排除しておかないと自然の循環が変わるらしい。


「ま、いっかとりあえず俺は帰るからもう自分一人で帰れるよね。」

「…………うん……………。」


自転車に乗って山道を乗り越えていくのだが道中みれば出るわ出るわ。


「◎△$♪×¥●&%#?!&$#△$♪×◎△$♪×¥●&%#」

「&$#&$””#%”&」

「+%#”+}+&%”#」


大量の妖怪呼べるような異形がたくさん出てきた。

その度に肉体を行使しているのだが中々に数が多くてウザい。

先ほど地図作成スキルを買ったせいでほぼ所持金は無い。


「買えるスキルって言ってもね。」


霊媒師

1銭


霊能力者

1銭


という説明も碌にないスキルしか存在しない。


「ここはひとつ賢者の家にあった本のことを実践してみるのが良いか。」


賢者曰く異世界人にも魔力や霊体と言った力を感じる器官は存在している。

そしてそれを把握するには大抵別の感覚を犠牲にしていることが多い。

なら既存の感覚を用いて力を感じる器官を扱うのではなくそもそも感じなければいい。


全ては己の見聞き触り嗅ぎ味わったことを信じればいい。


五感にあって五感にあらず。


「故に名称を五覚と呼ばれ異世界人の中でも術師と呼ばれている者たちの大半は覚えているとされる技術か。地球っぽくないけどな。」


まあこんな現代ファンタジーが見えるから地球じゃないとは言い切れないけど。

さて五覚をものにできるかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る