第27話

いざツーマンセルが始まると男子たちはラフプレーを横行していく。

ミウスさんに来るような真似はせずにこちらの方を完全に潰すつもりでラフプレーを横行していくのが見え見えなやり口だった。

もしそれに感化して感情的になったら格好の的、しかし何もしなかったらしなかっで怪我をしてしまう。

やり口としては詐欺師のような手口ではあった。


ただこの作戦には致命的な穴があった。

ラフプレーを横行していくことは自滅する可能性が少なからずあるということだ。


「うらあ!」


開始と同時にほぼタックルのようなディフェンスを躱すためには必要なのは体術を用いたフェイント。


「ミウスさん!」


相手がこちらに来るギリギリではなく審判にも見やすいようにかつ相手がそのまま突っ込んでくれるようにボールをうまく視界に入れさせてボールを横方向でミウスさんに向かって投げた。


彼はそのまま突っ込んでくるがそれは別にいい。

なんせ彼はこのまま自分で転ぶのだから。


「へ?」


自分が威勢余って転倒したことに気が付いたのは首が変な方向に曲がってからのことだった。

やったことはとても単純なことだ。

彼の視線から腹部を集中的に見ていること察知していたから先に足だけ下げた。

人の認識からずれれば自然と感覚がおかしくなる。


しかし審判をしている体育の教諭からすればただ妙な動き方をして後ろに下がったようにしか見えない。

剣道、合気道の類で袴をつけるのは重心を悟らせないようにするため。

それと同じように人体そのもので重心の位置を悟らせないようにする方法が流派を持つ空手の類では広く知られている。

ガマクとチンチクと呼ばれる技術で人体の筋肉の力みを利用してある程度重心をずらすことができる。

見ためは通常時のそれと変わらないのでタックルを仕掛けた男子生徒は攻撃をするタイミングをミスした。


この二つが時偶流にもあった。

かの流派は戦士術

戦士とはいかなる時も戦に居らねばならぬ。

しかし同じ戦法、術を用いていてはいずれ負けること確実なり。

故に時偶(意味:ときどき)に戦法、術を変えるべし。

時代と共に変化を求む術故に正式な方は在らず成らず置かず。

時代のうねりに順応しゆるからこそ最強へとい足らんことを願う。


時に槍、時に剣、時に弓、時に糸、時に石。


時偶流に外れ無し、全てが武器、全てが流なり。


この説明文がイマイチ理解できていなかった。

今尚この戦士術とやらは謎が多すぎた。

莫大な量の蓄積された術の全てが俺の中にあるようで全て俺たちが思いつけると気づけと言いたいのか。

100%のひらめきとそれを補う試し続ける心が無ければ成立することのない流派。


「な、なんで俺がケガしてるんだよ!先生こいつが無理矢理俺を……。」

「嘘をつくのは良くないし早く保健室に行っておきなさい。

 寝違えたように痛いんだろう?

 今の話はスポーツマンシップに則った言葉じゃないから体育の成績で好成績は持てるとは思わないように。」


これを皮切りにラフプレーが無くなるかに思えたが無くなることは一切なく。

むしろ増えていった。

そのおかげで今日保健室に行ったのは7人。


保健室送りの原因となったのが俺のという事実がクラスメイトは欲しかったのかもしれない。

事実無根だったとしても噂は立つ。


だが1人の生徒がその噂を全てかき消した。


「恥ずかしくないんですか!あなたたちは勝手に刀赤さんを悪者にしようとした証拠映像はきちんとここにあります!」


kanon製のコンパクトデジカメラを掲げているのは明日香さんだった。


「が、学校に関係ないものを持ってくるんじゃない!」

「自分のことを棚に上げないでください。

 それにこのデジタルカメラは学校側からきちんと許可をもらっていますしスマートフォンなどと違ってネットワーク機能のないモデルです。

 私は長い間学校を休んでおりましたのでその勉強についていくためにデジタルカメラで授業内容を撮影する許可をいただいております。

 ですから授業中に起こったことの証明は出来るんです。」


怪我をした生徒たちはしっかりとした証拠を突きつけられて噂を出すに出せなくなるかに思えた。


「加藤さん、無駄だよ。」

「え?」


その言葉を口にしたのは他でもない俺、刀赤 幹自身だ。


「既に学校のSNSに上がってるしまた一つ悪評が増えるくらいだから俺は気にしないよ。」


SNSの普及は情報の伝達速度はいじめ問題を取り上げる人たちにとって対処が困難になりやすい部門だ。

既に発信した情報を後から別の噂で書き換えることができるがその火消し作業も純然たる事実(傷跡)には噂の信憑性を上げる材料がそろっている。


「そ、そんな……。」

「まあそれをネットに上げても合成映像とかって言われるのがオチだと思うよ。」


動画には編集することができる先入観がある。

もちろん分かる人が見れば一切編集の入っていない映像だとわかるが変な避け方をしたので合成映像として見られる可能性が高いと思う。

学校側も教育委員会辺りから言われてネット上の巡回が強化されたりはするだろうが仲間意識の高い学生のうちだ。


「……あなた…の……やった……こと……無駄………じゃない……よ………。」


________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________


読者の皆様の感想。

レビューが作者の励みになります


コメントが苦手な方でもぜひ反応を示してくれると幸いでございます。


また誤字脱字に関しましては一息ついてから確認いたしますのでご協力お願いします。


出来ればより多くの方にお読みいただき感想をいただきたいのでレビュー評価を入れてくれますとだいぶ助かります。


レビュー評価を星一個入れていただけるだけでも呼んでいただける母数が増えますのでお願いいたします。


スライム道

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る