第6話

病院に行くとすぐに俺一人を病室の前まで通された。


「君が娘の言っていた例の言っていた彼かね。」

「申し訳ございませんが私はあなたのことを存じ上げておりませんし、またあなたの娘さんのことを言っていた人物が誰なのかも存じ上げておりません。」


「それもそうか、こちらも突然の呼び出しに応じてくれて申し訳ないことをした。

 これから私の言う情報を伝えた時に気を悪くしたらすまないが、

 娘に聞いた話によると鬼のような刺青とは違うものが背中にうっすらと見えていたと聞いてな。

 それで娘のカウンセリングを行ってもらっている心療内科医に聞いたら皮膚科の方で受け持っている君が該当した。」


あのおばちゃん先生、守秘義務というものを知らないのだろうか。

それに乗った俺も俺だしお互いさまには成るのかもしれないが………。


「なるほど、確かに私の主治医の先生に自分の患者の治療改善のために話してくれと言われたので間違いはないでしょう。」

「ふむ、一応情報的には間違いはないね。では娘を待たせているので入ってくれ。」

「あなたは行かないので?」

「娘が初めて他人に興味を持ったんだ。

 親と同伴なんて初めての友達付き合いと呼ぶには幼馴染でもない限りあるまじき行為だよ。」


この人はこの人で独自の価値観を持っているように感じられた。


「ああ、それと私の名前は加藤 浩次だ。後で改めてお礼を言わせてもらうよ。」


浩次さんは最後に名乗った後に病院の待合室の方向に去って行った。


「さてと。」


コンコンコン


「はいどうぞ。」


ガラガラガラ


「お呼びにかかりましたよ。明日香さん。」

「あ、来てくれたんですね!良かった。」

「一応今日が平日って言う自覚はあったんだな。」

「はい。忙しい中及びして申し訳ございません。」

「それが解ってるだけ、まだましか。」

「それで、その、私今日精密検査を受けたんですけど病気の原因だったものがまるっきり無くなっていたんです。」


本題か。

白虎様がやってくれたって言う事実は知っているがどのようにして症状があらわれていたかは知らない。

だが医者の見解から見るに完全回復はしたようだから他に病気を患っても居ない限りは大丈夫だと思う。


「それで……その………屋上で言ったことなんですけど…………」

「うん、一方的な要求でしたよね。アレでは契約以前の問題ですよ。」

「ごめんなさい。私、勝手に感極まってしまってあなたの事情を一切考えずに要求してしまいました。」


「今までそんな我が儘がまかり通ったかもしれないけど原因不明の不治の病だっけ?

 それが治ったからには普通の人と同じ生活をしなくてはいけないからね。」

「はい。」

「何も我が儘をするなとは言っていないから、

 これからは我が儘を通すにもきちんと下調べをしたうえで通さないと駄目だからね。

 解った?」


明日香さんは意外そうな顔をしていた。


「は、はい。」

「てっきり我が儘をするなって言われると思った?」

「はい。私小さい頃は普通に生活していたので普通に怒られることもありましたしその度に我が儘は言ってはいけないと教わりました。」

「まあ親御さんに我が儘を通したい時だってそうだよ。きちんと相手の行動を把握して先読みしないと、我が儘を聞いてもらえないしそれに対する対価も用意しないといけない。」


明日香さんは言葉一つ一つを聞き逃さないように真剣に聞いていた。


「対価は何を用意すればいいんでしょうか?」

「みんなの求めている対価が分かれば苦労はしないよ。それを考えるも練習だよ。きちんとこれから頑張りなさい。」


そういって話を区切るとクスリと笑う声が聴こえた。


「ん?」

「いえ、なんか先生みたいだなと思いまして。将来の夢は教師なんですか?」

「いいや違うよ。人に教えるって言うのは傲慢だし人の考え方を壊すことになりかねない。

 だから僕は教師に成れない。人を導くなんて神にでも成ったつもりかって思うからね。」

「そうですか、でも私、あなた、刀赤さんに会ってからの時間はとても少ないですけど教師にとても向いていると思いますよ。」


そういわれても俺の心には一切響かない。

なんせ、背中の鬼の呪いはずっと俺を蝕んでいるのだから。


「そんなこと言いに来たなら学校に戻るよ。学生の本分は勉強だからね。」

「ま、待ってください。気分を害したのなら謝罪します。ですからどこが琴線に触れたかを教えてください。」

「何故君が知っている事実を教えなければならないのかを教えてくれるかい?」


既に知るべきことだったんだ。


ふと視界の端に換金スキルの情報が見えた。


『”牛の獣鬼一族のい”の査定結果が出ました。』


呪い

牛の獣鬼一族の

換金額 不明

材料費 不明

技術費 ザーハック王国ミスリル貨10000枚


買い取り不可能な商品と鑑定、査定いたしましたので換金スキルの使用は不可能となります。

ここから先は買い取り可能貨幣のある世界に赴き直接買い取りしていただきますことをお勧めいたします。


またザーハック王国ミスリル貨の日本円との為替はショップスキルでご確認ください。


俺はもう一瞬思考が停止したが首を振りカバンを取って病室を後にした。


「あ、まって…………」


後ろから聞こえてくる声を無視して病室を去って行った。


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スライム道

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