第2話
その日何事もなく学校へ行った。
「お、刀赤か。病院は大丈夫だったか?」
「はい、問題なく終わりました先生。」
「そうか何とか手術とかできそうか?」
「そればっかりは……。」
「すまない愚問だった。あとだな……その……。」
担任の大山先生は言いづらいことなのか目を逸らしながら悩んでいた。
「なんですか?」
「言いづらいんだがクラスの保護者から苦情が来ている。」
「そうですか。」
恐らくその保護者はヤクザとでも思っているのだろう。
「校長にも顔が利く保護者で事情は確かに話しているんだが当人と話したいと言ってきてな。すまないが話してくれるか?」
「構いませんよ。」
「本当にすまない。日程は保護者に連絡を取ってから決めるから放課後に成ると思う。」
こんなこと日常茶飯事なんだ。
もう呪いのように憑いて離れない。
クラスでも白い目を見られながら学校を過ごした。
お昼休みに先生に呼び出されて今日の放課後でも構わないかと言われたので了承した。
こういうのは早く終わらせるに限るからだ。
放課後応接室に通されるとクラスのリア充にしてカーストトップの男子と校長に保護者と思わしき母親が居た。
「この子がヤクザの子?」
「あの、奥様、この子はヤクザの子ではありませんよ。幼い時に不幸があり傷を負ってしまっただけです。」
「ならなんで息子の言うような刺青を入れるのに失敗したような傷跡ができるのか説明してくださる?
できないんでしょう。
なら早くこの子を追い出してちょうだい。
私の可愛い息子の居るところで暴力事件を起こしそうな生徒と一緒に居させたくはないわ。」
こんなところだろう。
モンスターペアレントなのかはわからないがあらぬ誤解を生む傷のせいでこのようなやり取りは腐るほどやってきた。
俺の両親も小学生まではこのやり取りに参加してくれていたのだが疲弊しきってしまい子育てできる状況下に無いため今は独り身のおじいちゃんが保護者となってくれている。
おじいちゃんはもう自分でできるだろうと言ってこのやり取りに参加はしないようにしている。
「あなたも黙ってないでなんとか言いなさいよ。
それとも本当に反社会の人なのかしらね?
まあ目つきも悪いし当然よね。」
「私から言えるのはあなたに対して今回の請求をさせていただきます。
それと息子さんの方に対しても何らかの形で請求を。
では私はもう話すことは無いので出ていきますね。
校長先生もこの不毛なやり取りに耳を貸す必要はありませんので解散の宣言をしていただきたいのですがよろしいですか。」
「ちょっと!なんで私と息子があなたに対してお金を払わないといけないのかしら!」
「あなたでは話になりません。
確か未だ待っている彼、五十嵐 勲夫君は世帯主である父親と同じ弁護士をご志望とのことでしたね。
では御父上にお聞きいただくとよろしいでしょう。
ここには幸い監視カメラもありますしお判りいただけると思いますのでお帰りください。」
「こ、この子供のくせに!」
「お、奥さん辞めてください。ほら君も謝って!」
「校長先生、それはなにに対する謝罪でしょうか?私は正論しか言っていません。
それに彼らも国民というカテゴリに入っているのですから私はそれにのっとってルールを守っているに過ぎません。どこが悪いのかご教授いただけますでしょうか。」
だから煽るなと言いたげな先生方ではあったけど正論故に何も言えなかった。
「私が言いたいのはその態度!大人に対してろくに敬おうとしないじゃない!」
「敬うということは上下関係が発生します。
今回の場合どちらが被害者か加害者かを明確な状態でないと言えるでしょう。
そのような状態で上下関係を構築させようとすることは自己決定権が自分に存在している思っているという認識でよろしいでしょうか。」
「当たり前じゃない!こっちは被害者よ!」
「あなたの意見は理解しましたので教育委員会に提出の下警察の方に来てもらう予定です。学校側としてはことを大きくしたくないようですがこの場合学校側の怠慢がありますので責任の詳細後ほどお伺いいたします。」
「待て逃げるな!」
「加奈子、辞めなさい!今の状況では明らかにお前の方が悪い!」
突然応接室の窓が開いた。
そこに立っていたのはスーツ姿の勲夫の父親とみられる人物だった。
「は?あなたはどちらの味方なの!
私たちから金をせしめ取ろうって輩なのよ。
ヤクザ以外の何物でもないわ!」
「加奈子に勲夫がここまで愚かだったとはわからなかったよ。
敢えて外から話を聞かせてもらったけど君たちのやっていることは名誉棄損に脅迫、それに傷害罪になる可能性だってある。君たちはそうなる可能性があることを解っていっているのかい?」
「これはこれはお久しぶりですね。文夫さん。」
「刀赤君もすまないな私の家族が迷惑をかけてしまって、この前の時のように穏便に済まそうとは思わないので君の望むようにしてくれ。」
「あ、あなたとこの子はどんな関係で……。」
「父さん、なんでこんな奴の肩を……。」
息子の勲夫と妻の加奈子は刀赤と繋がりがあることに対して驚きを隠せずにいた。
「この子が小学生の時に相手側としてだが弁護したことがあったんだよ。
この子は昔から勘違いされやすい傷を負ってしまっている。
殆ど負け戦のような弁護だったし何より彼の両親も疲弊しきっていたからその後のアフターケアも請け負っていたから彼とはそれなりに話しているよ。
特に勲夫にはよく話していたはずなのに今回のようなことが起こったのは本当に残念だったよ。」
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スライム道
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