第24話 話して良かった

「今日はありがとう」

 みずきさんを途中まで送っている。

「私の方こそ、話してくれてありがとね」

 両親の事を初めて誰かに話して、やっと泣けた事が、まだ夢のように思う。

「あとごめん、服汚して」

「大丈夫だよ、気にしないで」

 涙だけならまだしも、鼻水がついていたらどうしよう。

 本当に申し訳ない。

弦大げんた君の勇気に、私も近々自分の事を話すね」

「えっ・・・」

 それって・・・

「良いの?」

「うん」

 迷いのない目を見て、僕は真剣な顔になる。

「その時はちゃんと聞く」

「ありがとう」

 日々の小さな積み重ねが信頼関係を強くしたのだろう。

 きっと話すと決めても、不安や恐怖があると思う。

 でも、みずきさんの決意が現れたら、ちゃんと聞く。

 聞き逃す事のないように。

「じゃあ、ここで」

「うん」

 繋いでいた互いの手が解かれる。

「またね」

「うん、また」

 手を振ってみずきさんを見送った。



「お兄ちゃん、やっと気持ちが出たね」

「うん」

 僕の部屋で弦姫ゆずきと今日の事を話す。

「次は僕がみずきさんの話を聞く番なんだ」

「そっか」

 この妹、どこまで悟っているというか、見透かしているのか。

「良い彼女で良かったね」

「僕にはもったいないよ」

「確かに」

「失礼だなー」

 クスクスと2人して笑う。

「はぁー、お兄ちゃん一人立ちしたし、私も自分の事を謳歌しよーっと!」

「十分自由な気がするけど」

「分かってないなー」

 なんなんだ。

「お兄ちゃん」

 部屋を出る前に振り返って僕を見る弦姫。

「みずきさんの事、大切にね」

「うん」

 余計なお世話だな。

「未来の義理の姉・・・楽しみ♪」

「はいはい」

 妹のペースにはたまに疲れてしまうなー。

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