WHOは信頼できない
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一斉休校で牛乳余りが深刻。業者が悲鳴
2020年3月3日
全国の給食事業者が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う全国一斉休校の影響を受けて、給食用の牛乳の生産ストップや従業員の勤務時間の短縮を余儀なくされている。
北海道のある事業者は「今月だけで4000万円の損失が見込まれている。余剰牛乳の取り扱いは未定だ。国と道に支援を求めたい」と語った。
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今日も小早川のスマホは、コロナ禍な日々のニュースを通知してくる。
3月3日の早朝、人の気配はまばらだった。
新聞配達の原付き、歌舞伎役者の描かれたトラック、チワワを散歩中のマダム。
コロナ前と変わらない早朝の街並みでひとつだけ異様なのは、数人の老人が行列を作っているドラッグストアーだった。
小早川は(噂のマスク老人か)と、すこし気分が悪くなる。
日本全国で品薄のマスクを買い占めて自慢することが、一部の暇な老人のライフワークと化して社会問題になっていると、ニュースで見ていた。
テレビの取材を受けた老人は自宅に溜め込んだマスクコレクションを自慢気に披露していたが、医療従事者さえマスクがなくて困っている情勢下で不必要な分まで買うなと思わざるを得ないし、何より買い占める目的が分からない。カネ目当てでマスクを買い漁る転売ヤーの方がまだ理解できる。
ノーマスクで街を闊歩する小早川もマスクの在庫ゼロなマスク難民の一人だが、彼はマスクの効果を疑問視していた。コロナ以前からインフルエンザを対象にしたサージカルマスクの効果を検証する調査は幾度も行われている。世界各地で行われた各種調査において、サージカルマスクの着用群と非着用群でインフルエンザの感染率に統計的な有意差は見られなかった。素人ではなく病院に勤務する医療従事者に限定した研究でも、インフルエンザの感染者にマスクを着用させて同居する家族への感染率を未着用群と比較した研究でも同じ結果だった。
つまり、マスクは付けても付けなくても、変わらないという結果だったのだ。
インフルエンザとコロナウイルスは別物だが、同じ結果はありえる。
「日本人のマスク信仰は、WHOと同じぐらい胡散臭いな……」
小早川はマスク懐疑論者だが、3月1日に世界保健機関(WHO)が『風邪症状のない人が予防目的で駅や商業誌施設など公共の場でマスクを着用する必要はない』と声明を出したせいで、自説さえも怪しく思えてくる。
たぶん今回の新型コロナで、世界中からブーイングを浴びるWHOの信頼性とマスクの効果がハッキリするだろうから、小早川はWHOがマスク着用を推奨しないと声明を出したことを覚えておこうと誓った。
「……マジかよ」
マンションから徒歩5分のコンビニの前で、小早川は足を止めて絶句する。
店員さんが『マスク未着用のお客様は入店をご遠慮下さい』という張り紙を付けていたのだ。入り口で立ち尽くすノーマスクの小早川と店員さんの目が合う。店員さんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「どうするんだよ……」
現在は早朝の5時だ。コンビニぐらいしか店は開いていない。
小早川は、店員さんに(ダメ?)とアイコンタクトする。
店員さんは(ダメです)と、苦笑いを浮かべながら両手でばってんを作る。
「すまん、逢坂……」
小早川は、手ぶらでマンションに戻ることにした。
逢坂の部屋のドアノブに手をかける。不用心なことに無施錠だった。
小早川は、漫画やアニメをあまり嗜まない。
それゆえに、コレ系のシチュエーションで鉄板な『ドアを開けたら全裸のヒロインで、キャ~ッ エッチィィ~ッ』というお約束のイベントに遭遇する可能性を想像できなかったし、風邪が治ってサッパリしたかった隣人の美少女がシャワーを浴びた後に全裸のままドライヤーで髪を乾かしている可能性など想像の範囲外だった。
小早川が、逢坂家のドアを開けると。
――ゴゴゴゴぉ~♪
けたたましい、ドライヤーの駆動音が聞こえてきた。
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