光るウミウシのように生きたい

ゴオルド

第1話 行ってみたいな中国の大使館

昔、在日中国人の知人が、なんかの手続きをするために中国大使館に行くことになり、私も付き添いってことで連れていってもらったことがあるんですよ。

だって、面白そうじゃないですか。よその国の大使館(領事館だっけ?)、行けるものなら行ってみたいじゃないですか。中国の大使館だなんて、すごい大きい壺とか龍の置物とかありそうじゃないですか。見たいじゃないですか。


で、知人と一緒に大使館に正門から入ろうとしたら、周辺を警備していた警察官(日本の警察)がわーっと集まってきて、そこから尋問ですよ、取り調べですよ、身元照会ですよ。

いやあ、こんな厳重な警備なんですねーとびっくりしました。結構長い間話をしましたよ。知人はパスポートと在留カードでしたっけ? それを見せたらすぐ通してもらえたんですが、私は日本人だからでしょうか、20分ぐらい話をしたように思います。


で、私から話を聞いた警察官がどこかに問い合わせて、それからしばらく路上で待たされまして、やがて「許可がおりたから大使館に入ってよし!」と言われまして(誰が許可してんの!?)、中に入れることになったんですが、裏口っていうんですかね、小さい入り口から入るよう言われました。えっ、正門から入りたい。お庭とかエントランスとか素敵そうだから見たいじゃないですか。

でもダメだと。手続きに来たんだから、手続き窓口のあるほうに行けと、そう言われたんですよ。残念。しぶしぶ裏口から入りました。



裏口の門を抜けて、ほんの数歩だけ歩いた小道の先、遠目に素敵そうなお庭があったんですが、そっちは行けないようにされておりました。ちっ。でも、ほんのちらっと見えただけいいか。

で、案内どおりに窓口に行くと、市役所みたいなカウンターがあって、手続に来ている中国人が列を作って並んでいました。私のイメージする大使館となんか違う……。これもう市役所じゃんっていう。転入届けとか出しにいくところと一緒じゃん。


で、知人が列に並び、やっと順番がまわってきて手続きをしようとしたら、窓口がプラスチックの板で物理的に閉鎖されました。えっ、どういうこと~? と戸惑う知人と私。職員に話しかけても無視されて(あちらのお役人さんはクールですね!)、警備員から「受付時間は終わりだから、何か用があるならまた明日来なさい」って中国語で言われて、追い出されました。

私は中国語がわからないので、このときは警備員さんから何を言われたのわからず、急につまみ出されたっていう印象でした。

で、ドアの外で知人にワケを聞いたら、「受付時間が終わっちゃったんだって」と。

えっ、大使館って受付時間とかあるんですね!? そんなの聞いてないよ~。


大使館を出たら、警察官の皆さんがまたわーっといっぱい集まってきたので、かくかくしかじか説明したら、「でしょうね。もう受付時間が終わりですもんね」って。ええ~、警察の皆さん、受付時間が終わる直前だったこと知ってたんですね、知ってたのに教えてくれなかったんですね……。っていうか警察の取り調べがなかったら受付時間に間に合ったと思うなあ。「まあ、また明日来たらいいんじゃないですか」って、そんな簡単に言わないでほしい。こっちは交通費かけて来てるんですよ。というか、私が面白半分についていったばかりに、余計な時間がかかってしまって知人には迷惑をかけてしまいました。


私の好奇心のせいで、よけいな交通費をかけるはめになってしまった知人よ、ほんとごめん。でも、一生に一度の経験ができたので感謝しています。ありがとう……。


ちなみに普通は日本人の付き添いって許可がおりないらしいですね。私はなぜか許可がおりました。なんで? って警察から聞かれましたが、いや、私も不思議。っていうかどこの誰が許可したのかも私は知らないんですが。誰の許可? 中国側? それとも日本側?


あと、大使館には香港旅行の申請書が置いてあったので、一部もらいました。なぜ香港なんだろ。在日中国人はよく香港に遊びにいくってことなんですかね。上海とか北京とかじゃなくて? よくわからないんですが、その書類には「結婚しているかどうか」を書く欄がありました。「未婚、既婚、別居、離婚、死別」のどれかを丸で囲むらしい。いや、分類が細かい! 別居してるとかわざわざ役所に言う必要あります!? 離婚と死別を分ける意味あります!? お国が違うと、こういう書類の一つにも違いが出るんですね。勉強になりました。


このときにもらった申請書は記念に今もまだ持っています。先日、書類を整理していたら出てきましてね。ちょっと懐かしく思い出しました。あの頃、中国は私に近かったのにな。今はもう遠い。転職して、時間がたって、遠くなってしまったなと思う。みんな元気にしているかな。

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