第6話 帝国との戦争(1)
帝国軍が攻めてきたってことで、王国へ向かった。
移動は馬車を使う。
リリアは初めての馬車にキャーキャー言ってた。
何でも楽しめるリリアもかわいい。
王国に着くと、たくさんの兵士がどこかへ向かっている。
これが戦争なのか。
町の人もソワソワしているようで、たまに怒鳴り声が聞こえる。
ナンシーさんは慣れているのか、いつも通り話しかける。
「リリア様、少し休んだら、王へご挨拶していただきます」
「うん。わかったー。エリオット。王様に会えるんだって、なんだか緊張するね」
「ああ。そうだな」
僕たちはお城に入ると、別々の部屋に連れていかれた。
王様の前に出てもいいように、キレイな服に着替えさせられた。
僕は貴族が着るような服を着て、リリアたちを待つ。
ガチャ
扉からリリアが入ってくる。
服装はいつもの『聖女の法衣』だが、少し化粧をしているようで、大人っぽく見える。
「リリア。キレイだよ」
「ふふっ。ありがとう」
いつもの笑顔になる。
「エリオットもカッコイイよ」
「はははっ。ありがとう」
--------
少し待っていると、王様の待つ謁見の間へ呼ばれる。
謁見の間はとても広く、周りは兵士が並んでいて、奥には豪華なドレスとキレイな金髪をした女の子が座っており、その隣にハゲた爺さんが立っている。
ハゲた爺さんが話し出す。
「よくぞ参られました。聖女様。こちらは第2王女のシルビア・トリバルディア様です」
「聖女様。はるばる城まで来ていただきありがとうございます。私はシルビア。国王である私の父と姉は戦争と聞いてすぐに最前線へ向かわれたので、この城にはおりません。今我が国は、ウォーリング帝国の攻撃を受けているのです。そこで、国民の士気を高めるために、聖女様のお力を借りたいのです」
「はい。アタシが悪い奴をやっつけてみせます」
「まあ。なんと勇ましい聖女様」
「お任せください。エリオットがみんなを助けてくれます」
「エリオット?どなたです?」
「ここにいる最強の剣士です。すごいでしょ?」
おい。変な紹介するなよ。
「はい。僕がエリオットです。最強かはわかりませんが、精一杯頑張ります」
「うふふ。最強なんてとても頼りになりますわ。よろしくお願いしますね」
--------
そして、聖女リリアによる国民への演説が行われた。
僕はせっかくだから、城の兵士と剣の稽古をつけてもらう。
国の剣術は、僕の剣術と違って、クセのない整った印象だったので、とても勉強になった。
稽古を終えて廊下を歩いていると、興奮した様子の兵士が声をかけてくる。
「勇者エリオット様ですね。お会いできて光栄です」
「え?はぁ。僕はエリオットですが、勇者じゃないですよ」
「そうですか。実力を隠されているんですね。一緒にこの国を守りましょう。では」
兵士が走っていく。
なにか誤解をしているようだ。
その後も何人かの人に勇者と呼ばれた。なんだろう?
後で聞いたんだけど、演説の時にリリアは、僕が国を助けるから大丈夫ってことを言ったらしい。
それを聞いた国民は『勇者様万歳』と叫び出し、僕が勇者スキルを持っているような盛り上がりをみせたらしい。
王女様もそれを止めなかったようで、稽古を終えた僕に勇者様と声をかける人がいたんだろう。
僕は最初の方は違うって言ってたけど、期待いっぱいの目を向けられると悪い気がしたので、今は放置している。
だって、勇者じゃなくても国を救えば勇者のようになれると、僕は思ったからだ。
--------
すっかり勇者扱いになった僕は、国王が戦っている最前線の砦へ行くことになった。
移動中にウォーリング帝国について、ナンシーさんに教えてもらう。
ただ、なぜかナンシーさんは生地が薄く下着がスケそうなローブを着ている。
「ウォーリング帝国は周囲の国を滅ぼして、領土をどんどん拡大している国よ。最近、私たちの隣にあったアリオン国を征服したから、次は私たちの国へ攻めてきているのね」
そう。少し目を細めると下着が見えそう。
「ウォーリング帝国は滅ぼした国の人々を奴隷にして強制労働させたり、ケガや病気で働けない人を殺したりする恐ろしい国よ」
いや、しっかり目を開いた方が見えそうだ。
「特に、軍隊を率いているレバルドゥージ将軍は自ら先頭に立って、戦えない村人を殺したり略奪や放火を繰り返してるのよ。しかも、人を殺している間もずっと笑っているのよ」
ナンシーさんの肌に近い下着なのか、はっきりと見えない。
黒色ならちゃんとわかるのに。でも、谷間は見えている。いいね。
「ねぇ、ちゃんと聞いてる?エリオット」
「はい。聞いてます。ところで、なんで着替えたんですか?」
「ドラキュラと戦った時にローブが壊れたから、急いでこのローブにしたのよ。このローブも魔力を高める効果があるわ」
へぇー。スッケスケのローブを着ているの気づいてないのかな?
「ねぇ。エリオットって勇者だったの?」
リリアからのまさかの質問。
「いやいや、リリアが僕のことをすごいすごいってみんなに言うから、みんなが勇者だと勘違いしてるんだろ」
「そうなの?エリオットは悪い奴をやっつけてくれるし、いつもアタシを守ってくれるから、本当は勇者なんじゃない?」
「そうよ。私もエリオットが勇者かもしれないと思っているわ。スキルが途中で変わったことは今まで無いけれど、勇者が特別なスキルだとしたら、何が起こってもおかしくないと思うわ」
「ナンシーさんまで……ありがとうございます。僕にできることは全力で頑張ります」
そうして、僕たちは最前線の砦に着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます