第3話 隣村の歓迎

 隣の村に着いた。

 途中で魔物に出会わなかったのはラッキーだ。


「あー、疲れたー。早く休もうよー」

「リリア様。先に村長へご挨拶しましょう」

「はーい」


 大きめの家へ向かい、村長っぽいじいさんとナンシーさんが話している。

 リリアが聖女であることを伝えると、すぐに家の中へ入れてくれた。


 中には、僕より少し年上の女性がにっこり微笑んでいる。

 村長の孫だろうか。綺麗な顔をしている。


「ねぇ。エリオット。あのお姉さん知ってる人なの?」

「いや、僕もこの村に来るのは初めてだから知らない人だよ」

「ふーん。そー」


 リリアが不満そうな顔をしている。

 これは、機嫌を取っておいた方がいいな。


「リリア。その法衣似合ってるな。かわいいだけじゃなく、聖女としての美しさもある。」

「ふふん。まぁね。アタシ聖女だからねっ」


 いつも通りに戻った。元気なリリアはやっぱりかわいい。


「ねぇ、あなたたち。村長の家でイチャついてないでよね。お食事に誘って貰ったんだから、そこの机でおとなしくしていてくれるかしら」

「やだ。ナンシーさん、イチャつくなんて。いつもこんな感じよ」


 リリアは冷やかされたのに嬉しそうにしてる。

 さらにご機嫌になってる。よかったよかった。



--------



 村長の家での食事は豪華だった。

 家にいたお姉さんは村長の孫で、将来はこの村を仕切るらしい。

 綺麗なだけじゃなく頭もいいらしい。すごい。

 ただ、最近近くに盗賊が住みついているらしく、食料や村の人をさらっていくことがあるらしい。

 魔物だけじゃなく、人間にも悪い奴がいるんだな。


 食事が終わると、そのまま泊めてくれることになった。

 しかも、広い家なのか、僕たち一人ひとりに個室を貸してくれた。


 僕は日課の剣の稽古をしてから、部屋のベッドで横になった。



--------



 ガチャッ


 誰かいる!

 剣を取ろうと腕を伸ばす。


「あら、起きましたか」

「ん?誰です?」


 扉を閉める女の人がいる。


「私は村長の娘のエリザですよ。お食事の時にご挨拶したでしょう」

「あぁ、そうでしたね」


 全然覚えてない。


「エリオット様、あなたは聖女様のお供の方ですので、お強いのでしょう」

「いえ、僕の強さはフツーですよ」

「まぁ、ご謙遜を。強い人はこの村に必要ですので、エリオット様のお力をお借りしたいのです。できればずっと」


 エリザさんが微笑みながら近づいてくる。

 綺麗な人だが……僕にはリリアを守り続ける使命がある。


「この村にいる間なら、協力することはできますが、それ以上はできません。僕は聖女とは関係無しに、リリアをずっと守るって決めてるんです」

「あら残念です。おじいちゃんにはフラれてましたって言っちゃいます」


 村長に言われて来たのかよ。



「きゃあああっ」


 リリアの声だ!

 僕は剣を取り、すぐにリリアの部屋へ走る。


「なっ、なぜ俺に気づいたんだ!暗殺者のスキルだぞ」


 ガラガラしたおっさんの声がする。

 リリアの部屋に着くと、真っ黒な服を来たおっさんがいた。

 リリアは弓を構えている。


 ビュッ

 ブスッ


「いってー」


 リリアが矢を放ち、僕の左足に刺さった。なぜに?

 思わずしゃがむ。


「わー、ごめん。エリオット」

「いや、そんなに深くないから大丈夫だ」


 浅くもないが、まぁ大丈夫だろ。

 リリアの矢で倒れるわけにはいかない。


「あら、誰です!?」


 エリザさんが駆け付けた。

 すると、ガラガラおっさんがエリザさんを後ろから捕まえ、ダガーをのどに近づける。


「おい。誰も動くんじゃねえ。動いたらこの女を殺すぞ」


 くっ、人質か。


「どうしたの?盗賊!?」


 ナンシーさんが現れる。


「はい。おそらく」

「まずい状況ね」


 すぐに状況を把握する。すげーぜ大魔導士。


「おーおー。イイ女がたくさんいるじゃねぇか」


 ガラガラおっさんの後ろから、もう一人、ヒゲボーボーおっさんが歩いてきた。

 これが暗殺者のスキルか。全然気付かなかった。


「おい。そこの魔法使い。そのままじっとしてろよ。お前も高く売り飛ばしてやるよ」


 こいつら、女性をさらって、奴隷として売っているのか。


「いや、先にこっちの小娘にするか。若い方が高く売れそうだ」

「ギャハハ。アニキは若い女が好きなだけだろ」


 コイツ。リリアに触るな。

 ヒゲボーボーへ剣を振るう。


 ガキンッ


 ダガーで防がれる。


「このガキ、立場わかってんのかよ」

「ちょっと、人質がいるのよ!?」


 ナンシーさんが叫ぶが、僕には人質より、リリアが大事だ。


 ガキッ

 キンッ


 剣を振るうが、全て防がれる。

 クソッ、スキル持ちめ。


 ドスッ


 ヒゲボーボーのダガーが迫ってきたので左腕で防ぐ。

 痛い。が、狼に噛まれたときよりマシだ。


 僕は剣を捨て、奥のガラガラおっさんの位置を確認。

 右手をヒゲボーボーに向ける。


「コイツ。何なんだ。痛みを感じないのか」


「はかいビーム」

 ギャリリリリリー


 白い光がヒゲボーボーの心臓を貫く。

 その後ろにいたガラガラおっさんの肩も貫く。


「ぐわぁあああっ」


 痛みでエリザさんの拘束が外れたため、二人に距離が空いた。


「ナンシーさん!」

「ええ、ウィンドカッター」


 ビュウッザシュ


 ガラガラおっさんの体が切り裂かれた。


「ふぅー、危なかったですわ。でもエリオット。今回はうまくいきましたけど、エリザさんが人質にされていたの。わかってますの?」

「すみません」


 僕は動けないまま謝る。

 僕はリリアに危険が迫ると、自分を抑えられない。


「エリオット。矢当ててごめんね。大丈夫?」


 リリアが抱きついてくる。胸が当たる。

 お?前より大きくなっている?


「ヒール」


 リリアの治癒魔法で傷が治る。


「ありがとう。リリアが無事ならそれでいい。エリザさんもみてくれないか」

「うん。エリザさん。大丈夫ですか。ヒール」

「まぁ。ありがとうございます。聖女様。痛みが無くなりました。これが聖女の力なのですね」

「ふふん。まーね」


 得意げな様子もかわいい。


 この後、村長の家を片付けし、僕たち三人は一緒の部屋で寝ることにした。

 明日は、隣町に出たゴースト騒ぎをどうにかするってナンシーさんが言っていた。


 リリアはゴーストって言葉にワクワクしていたが、僕はリリアの行くところについていくだけなので、あまり詳しい話を聞いていない。


 あと、僕はリリアを守るためってことで、リリアを抱き枕にしている。

 良い匂いがする。今日はよく眠れそうだ。




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