第51話 処遇と宝物

皇城の薔薇の間は主に会議などで使われる部屋だ。豪奢な椅子にはリリパット駐屯地からやってきたメンバーが座っている。


「アメリカと中国のエージェントはもう取り逃がしはない筈だ。奴等はまとめて地球に送り返す。フィロメオ、2人の兄の処遇はお前が決めろ」


フィロメオは一瞬顔を顰めたが、すぐに取り澄ました。


「長い帝国の歴史の中で後継者争いは何度もあったことです。それに敗れた者を隔離しておく施設もあります」


「処分しないのか?」


「そこまでは必要ありません」


毅然とした口調でフィロメオは言い切った。五条が心配そうにフィロメオを見つめている。


「分かった。好きにしろ。必要な時はゲンベルク17世として俺が登場するから、遠慮なく言え」


「ありがとうございます!」


フィロメオが元気に頭を下げた。五条は微妙な顔をしている。和久津は何か言いたそうだ。


「ちょっと、フィロ君!パイセンがこんなに優しいってことは必ず裏があるっすよ!!後からめちゃくちゃな要求をされますよ?きっと」


ちっ。余計なことを。


「お礼をするのは当然のことです。私に出来る事なら何でもするつもりです」


「駄目よフィロ君!何でもとか言っては。根岸さんは権力には興味ないけど、神様を喜ばせる為なら何でもやる人よ!!」


五条もフィロメオをたしなめる。


「ほほほ。お2人とも言い過ぎではありませんか?ボスは決して"極"悪人ではないですよ」


「そう。サブローは悪くない。世界が悪い」


「なぁ!早く宝物庫に何があったか教えてくれ!」


堪え性のない望月が急に話を変えた。宝物庫の中身は皇城に来たメンバーにも配ることになっている。それを知りたくてうずうずしているのだ。


「ふん。例えばこんな魔道具があったぞ」


俺はマジックポーチから眼鏡の形をした魔道具を取り出した。


「これは【統計】のスキルが付与されている眼鏡だ」


「【統計】ですか?」


五条がいち早く反応した。欲しいのだろう。


「ああ。その眼鏡をかけて条件を指定しながらも【統計】を発動すると、レンズの部分に数字が映し出される」


「えっと、例えばですけど。この眼鏡をかけて、"人間の数"を意識しながら【統計】を発動したら、視界に映っている人の数が映し出されるってことですか?」


五条が身を乗り出してきた。


「そうだ。【統計】のスキルには簡単な鑑定のスキルも含まれているらしい。例えば男女比を意識して【統計】すると視界に映っている人間の男女比も表示される」


「凄い!ちょっとやってみてもいいですか?」


五条が立ち上がって眼鏡を手に取り、顔に掛けた。そして息を整えてから念じるように部屋を見渡した。


「わっ、凄い。ちゃんと4対2になってます」


俺、和久津、富沢、フィロメオと黛、望月か。


「どうやら五条が欲しいみたいだな。皆、異論はないか?」


他の者達は興味がないようだ。誰も手を挙げない。


「それと、これは俺が貰おうと思っているスキルオーブだが……」


マジックポーチからスキルオーブを取り出す。


「なんのスキルオーブすか?」


「【性転換】のスキルオーブ。手に触れた対象を【性転換】させる」


皆の顔が見事に引き攣った。

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