第44話 会議
「では、帝位継承後について会議を始める」
「ちょっとパイセン!!話が飛び過ぎっす!!」
和久津が立ち上がってつばきを飛ばした。
「五条。ゲンベルク帝国の後継者に相応しいのは誰だ?」
「……フィロ君です」
俺に呼ばれ、保護者として駐屯地にやってきた和久津と五条は、フィロメオを挟んで椅子に座っている。三者面談をやっている気分だ。
「五条はこう言っている。フィロメオ。どう思う?」
「……」
フィロメオは年相応に下を向いて自信なさげだ。
「隣の部屋には帝国からの使者がいる。奴は皇帝からの命を受けてフィロメオを後継者として迎えるためにここへやって来た」
「……そう、ですか」
フィロメオはまだ顔を上げない。
「アメリカと中国がそれぞれ第1皇子と第2皇子の支援をしているそうだ。このままだと最悪、国が割れて最終的には植民地になるだろう」
「そんな!!」
フィロメオがやっと顔を上げた。
「しかしフィロメオが皇帝にならないというのならば仕方がない。地球の奴等がこちらの星で迷惑をかけるのは見過ごせないからな。大きなフィロメオに皇帝になってもらう」
「「大きなフィロメオ?」」
和久津と五条が仲良く首を捻った。
「そうだ。大きなフィロメオ。つまり富沢を皇帝にする」
「全然、つまりじゃないっす!!迷惑を飛び越えて簒奪っす!!」
「言葉を慎め。大きなフィロメオは皇帝の使者が選択したのだ。つまり皇帝が大きなフィロメオを求めていると言っても過言ではない」
「完全に過言!!」
「それに日本エクスプローラー協会の駐在員である轡田も富沢のことをフィロメオと思っているからな。つまり日本政府と皇帝の両者が大きなフィロメオ推しということだ」
「そもそもそんなのパイセンの魔剣ありきじゃないですか!」
「貴族の半分ぐらいの認識を弄ってしまえばなんとかなるだろう」
「そこまでやるならアメリカと中国をなんとかする方が早くないですか?」
「はぁ」
「「なんで溜息!」」
仲の良いことだ。
「それの何が面白いんだ?そんなことで神様が喜ぶと思っているのか?」
「国をオモチャにしてる!!」
「……あの」
フィロメオがしっかりとこちらを見据えた。
「僕を皇帝にして下さい!お願いします!!」
「いいのか?皇帝になってしまえば今までのような好き勝手は許されんぞ」
「皇帝になって好き勝手します!!」
「……分かった。では、帝位継承に向けての会議を始める」
小さなフィロメオが立ち上がった。
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