第12話 雪
雪深い冬が足速に近づいてきているようだ。
アミーとおじいさんの小屋の暖炉にも薪が入ることが多くなり、暖かな炎と時々はぜる薪の高い音が小屋の中で微かに響く。
暖炉の炎は静かにアミーとおじいさんを包んでいる。
暖炉から届く炎の明かりに照らされるおじいさんの横顔をアミーは見ていた。
雪が積もる前の静かな夜だった。
町の木工工場はどんどん栄えていった。
おじいさんの作った物でないと買わないという人達もしょっちゅう家具を買い替えるわけでもなく、以前に比べると注文ははっきりと少なくなっていた。
それでも、おじいさんは注文が来た時のために材木を適当な大きさに削り、いつでも仕事に取り掛かれるように準備していた。
おじいさんは立ち上がると作業部屋へと歩いていった。
いつものおじいさんの木を削る音が静かに聞こえ出す。
アミーが手伝える仕事も今は無い。
アミーは、こっそりと食料を保存している木箱の蓋を開けて中を覗いてみた。
増えることもない木箱の中の食料は乾燥したパンと小麦粉が少しあるだけだ。
ふと気がつくと隣の作業部屋の開け放たれていた扉の向こうからの作業の音が消えている。
アミーは扉の向こうへ声をかけてみる、
「おじいさん?」
返事は無い。
アミーはゆっくりと扉に近づき中を覗いてみるが作業椅子におじいさんの姿が無い。
床に作業道具が転がっている。
そしてその横に、
「おじいさん、どうしたの? ねえ、おじいさん」
アミーはありったけの大きな声でおじいさんを呼んでみた。
しかし、おじいさんは胸の辺りに手を当てたまま倒れていて返事は無い。
アミーは駆け寄り、おじいさんを揺すったりしてみるが、おじいさんの反応は全くない。
「ムー、どうしよう、おじいさんが動かなくなってしまったよ」
アミーは、とにかく表へ出て誰かを呼びに行こうと扉に体当たりをするようにぶつかった。
開かない。
扉は固く閉ざされていて開かない。
「しまった、雪だ。こんなに積もっていたなんて」
昨日の夜は雪が静かに舞っていた程度だった。しかし朝から降り出した雪は静かにしんしんと積もっていたのだ。
窓の外を見ると、風のない景色の中、大粒の雪が静かに、そして向こうが見えないくらいに、静かに舞い降りていた。
「ムー、どうしよう、外に出られないよ」
ムーは、藁で編んだ専用の絨毯から動こうともせず蹲っている。
寒い。
暖炉を見ると炎は消えて赤い炭が残っているだけだ。
小屋の中にある薪は残り少ない。
後は小屋の外に保管してある。
アミーはおじいさんを力一杯に引っ張って暖炉の近くに寝かせると、小屋の中にある残りの薪を入れた。
「おじいいさん、木工用の材木も使わせてもらうよ」
そう声を掛けて、アミーは隣の作業小屋へ行き、その小さな手で大きな斧を取った。
「おじいさん、ごめん、起きてきたらちゃんと謝るからね」
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