さよなら。大好きなひと
春の小径
邪魔というか足手まといというか
「私には好きだと思える人ができました。そのため、婚約を白紙にしていただきたい。もちろん慰謝料は支払わせていただく」
「そのお相手はどなたか、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「…………ソウレ伯爵家のボウレイ様だ」
ボウレイ様……
そう、私には逆さになっても敵わない方です。
「わかりました。お申し出お受けいたします」
「すまない。今から両親立ち合いで申請していただけるだろうか」
「はい、わかりました」
私はマルセル様と共に馬車で学園から貴族院へと向かいました。
これが最後だと思うと、なんとも感慨深……くはありませんね。
両親は同じ爵位、共に学園卒業後に貴族籍から外れる第三子子息と第二子息女。
そして卒業式はすでに来週。
結婚など関係なく、私たちは貴族籍を外れる未来しかありません。
私は卒業後に
婚約者がいなければ、付属寮にはいれます。
居住も確保できるので、正直独身の方がありがたいのです。
「こんなギリギリに」
「なんと常識のない」
貴族院に着くとすでに両家の両親が到着していた。
両親がマルセル様のご両親を責めています。
仕方がありませんね。
卒業式後の王城で開かれるパーティーで婚約者と共に参加するのです。
貴族として最後のお務めです。
パートナーと出るということは『この人と結婚します』と宣言するのだ。
ただ……私は貴族社会に残らず平民となる。
数年は忙殺されるからパートナーは邪魔というか足手まといというか。
「お父様、いまさらでしょう?」
「ランガ!」
「お母様、私は数年忙殺されるので嬉しいですわ」
「……そうね。あなたは手に職をつけるのですもの。家庭を持っていたら仕事に支障がでるわね」
「そうです。仕事が忙しくて徹夜仕事になるかもしれません。それなのに『帰らせてください』とは言えませんよ。言いたくもないですが」
マルセル様のご両親は青ざめて俯いているのは、私の稼ぎをあてにしてきたから。
市井に下る私に養ってもらおう、という魂胆だったのです。
貴族として恥ずかしくないのでしょうか?
そのため、マルセル様に私を手放さないよう言い続けていた。
そんなことをすれば、マルセル様はプレッシャーに感じるのは当然のこと。
私は放っておきました。
どこで働くかは本人の希望であって押し付けることではないのだから。
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