第6話 収穫なし!



 あれから誰にも質問されたり怪しまれなかったりしたので、時々シロンを散歩させる事にした。


 データ? 改ざんしているよ? ずっとね!


 見つかった時が怖いから、あんまり考えたくないけど。


 改めましてここは悪の組織の施設、ハテノ・クウ研究所。


 施設の中はそれなりに広い。


「星、たくさん」

「今日も綺麗だね」


 施設の外は真空で、逃げ場がない。

 座標場所はずっと変わらないようなので、どこかの星に向かって着陸、なんてこともなさそう。


 で、そんな施設の中、たどり着いたのが、

 メビウス環。

 またの名を還流回廊という場所だ。


 本日はここに用がある。


「ぐるぐる?」

「こら、見ちゃいけません」


 そこはよく分からんぐるぐるの渦がたくさんある不思議な空間だ。

 時々、体がすけた幽霊みたいなのがいる。

 たぶんこの研究所でお亡くなりになられた方たちの魂とかだろう。


 施設の設計者に聞きたいよ。

 なんでそんな呪われそうな場所作ったん?


 目が合ったら呪われる気がするので、亡霊を見かけても基本スルーすることにしている。


 ここ以外で行けるところと言ったら……。


 他にはシロン達のような被検体がいるような研究室や。


 あとは、研究者が普通にご飯を食べる食堂とか休憩室とかもある。けど、人目が気になるからなぁ。


 ちょっとした運動のできる屋内緑地公園みたいなとこもあった。


 でもあそこは……色々な空間を圧縮している所なので、他の人が使ってたら無理だし。


 たまに、肉体修行している研究者がいるから。


 シロンをそんなところに向かわせるわけにはいかない。


「あーあ、なんか脱出のヒントないかなぁ」


 たまにいい亡霊もうろついてるので、そういう人とはお話してます。


「ふむ、何か悩みかね。若人よ。私でよかったら聞くだけ聞いてやろう」

「ありがとうございます。名もなき老人さん。でもいつも聞くだけですよね」


 本日の収穫、無し!


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