第3話『ランキング』

 ドクターカーが町野中央病院に到着した。


 今日は休診日なので、時間外救急入口から院内に入り、そのまま処置室に搬送された。


 ……私は現在、町野中央病院の検査室から隣町の東戸中央クリニックのPCR検査センターに出向しているので、処置室に入るのは本当に久しぶりだ。 


 出向前には、救急患者さまの心電図エーカーゲーを撮りに心電計を転がして良く入っていた部屋だが、まさかこんな形で自分が入ることになろうとは(泣)


「遥さん! どーしたのぉ〜? 院長の指示書見たら見慣れた『見慣れない苗字』(←ん?)だから驚いたよ!」


 病棟の染谷師長だ。


ちゅうクリ(東戸中央クリニック)で色々大変だったって聞いてたよ! 無理がたたっちゃったのかね……」


 確かに、仰る通り『色々』って言葉では片付けられない程、本当に色々あった(←語彙力💧)


 染谷師長から一通ひととおり心臓カテーテル検査の説明を受け、同意書にサインした。


 ここで師長の口から、衝撃的な台詞が!


「事前準備でおしもの剃毛するけど……良い?」


 心臓カテーテル検査は、動脈に『カテーテル』と呼ばれる細い管を入れ、心臓まで刺入して造影剤を注入し、主に『冠動脈』と呼ばれる心臓自体に酸素や栄養を送る血管の状態を見る検査だ。


 カテーテルを刺入する血管は、検査後の止血処理や管理の容易さから、主に腕の動脈が使われるが、稀にカテーテルが心臓まで到達出来なかった場合、鼠径そけい部(足の付根の動脈)から刺入する事もある。 そうなってから慌てて剃毛……デリケートゾーンの毛の処理……をして時間をロスする訳にはいかないので、予め処理しておくのが通例だ。


 ああっ! 心電図の時と言いと言い、何の因果でこんな辱めを受けなくてはならないのだろうか(号泣!)


「は……はい……お願い致します……」


 よくよく考えてみれば、とは言え、墨台さんにオッパイ見られちゃったし(←ん? 事故? 『第1話 胸部電極』をご参照ください🙇🏻)今さら怖いものなどないわ!


 術前術後衣に着替え、剃毛した後、オムツに履き替え、ストレッチャーで心臓カテーテル検査室に移動した。


 室内は最新の設備で埋め尽くされていた。


 ……前回も言ったが、院長は循環器の権威なので装置も充実しており、術式閲覧ルームまである。 これを見て、不安な気持ちが少し落ち着いた。


「じゃ、始めるよ……局麻するから、最初『チクッ』とするよ」


「はい」


 麻酔が効き始め、検査が開始された。  心カテモニターは患者の頭上に配置されているので、私からはえない。


 麻酔されていても、カテーテルが刺入されたのがわかった。


「……」


「……」


「……あれぇ?」


 ……!


 こ、これは『ドクターの口から聞きたくない言葉ランキング』の第三位だっ(泣)


 因みに第二位は『やばっ!』


 堂々の第一位は『ま、良いか』だ。


 ……って冗談を言っている場合では無い!


 私の心が、再び不安で満たされた!

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