第4話 『早期発見』

 びっくりして、目を白黒させている私の手を握った美緒は、反対の指で、私の『親指』を指差して…


 「これよ! サムちゃん!」と言った。


 「…?」


 「真優には、『マンガ』があるじゃない! マンガで、読者のみなさんに、病気の早期発見の大切さを伝えたら?」


 ……。


 ……!


 そうか! もしかしたら、私が、こんなにつらく感じているのは、目に見えない『誰か』が私に『私しか出来ない事』を教えてくれていたの…かも…。


 そう思ったら、涙が溢れ出した。 こんな私でも、病気予防の手助けが出来る可能性がある…その希望が見えた瞬間だった! 思わず、美緒に抱きついて、声を出して泣いた。 美緒も貰い泣きしてくれた。



 …気持ちが落ち着いた頃、美緒のお母さんが、心配して探しに来てくれた。 美緒と私の行動パターンは決まっているので、すぐに見付けてくれた。


 「二人とも、早くしないと、桃、わたしが全部食べちゃうわよ!」…と茶目っ気たっぷりに言われ、急いで病室に戻った。


 涙のあとの桃の味は、格別だった。

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