第44話 初恋の人 *どうやら相手はまだ思っているようですよ?

僕はエルさんに無理やり準備をさせられつつも、頑張って逃げる方法をどうにかして考えていたけど、

「往生際が悪いですよ。」

の一言で何も出来なくなった。


やだ…出たくない…。ただでさえ遊撃隊に入った時点でもうメンタルがアレだったのに、学校に行く?途中から?


無理なんだよねぇ…。怖い……。


「早く準備してください。国王様からの命令なんです。こればかりはどうしようもありません。」

「それは別に良いんですよ⁉︎けどですね!今!もう一学期の途中ですよね⁉︎しかも中途半端な時期の編入です!そんな中で馴染めるんですか?普通無理ですよ!人見知りですし、中の良い貴族もいません!誰も知り合いが居ない中でどう暮らせば良いと言うんですか⁉︎他の国の人も僕のことをなんかこう狙ってくるみたいなことも言ってましたよね⁉︎」

「う〜ん…正確に言えば一人ではありませんよ?」

「へ?」

「私が一緒に行きますから。」

「いや、それは知ってますけども⁉︎」

だって僕の護衛として買い取らせてもらったし、こういう時に離れたら何で買ったの?ってなるし。


「むぅ…あまり言いたくはありませんがデコル様にも初恋の相手というものが居たらしいですね…。」

「ううぇえ⁉︎」

きゅ、急に何を言い出すんだ⁉︎

「いえ、隠したくなる気持ちもわかります。ですがこちらとしてもそれについての事情は察しております。」

「察してるって何ですか⁉︎」

すると急にエルさんが耳元でこう囁いた。


「同じクラスにいるらしいですよ。その初恋の方。どうです?少しは行く気になりましたか?」

「…………………。」

正直言おう…。




もっと行きたくなくなった!




「やだぁ………顔見せるのが怖いよぉ………。」

「……逆効果でしたか…。でしたら…、デコル様。その方から伝言が届いています。」

「ふぇえっ⁉︎」

「読み上げますね。「ちょ!」

『久しぶりのことなので、どう始めようか迷いました。ですが、デコル君ならきっと変わっていないだろうと思うので、前のように書かせてもらいます。

お元気ですか?相変わらず魔導器具の分解ばかりをやっていると噂になっていますよ。それに、遊撃隊に新人として入れてもらったとか。『極点』として目覚めたのは良いですが、私よりも有名に。あんなに目立ちたくないと以前から言っていたのでさぞかし辛いでしょう。

ですが、これから生きていく上で、そういう目にも慣れておいたほうが良いと思います。なので、是非来てみてはどうでしょうか?中々授業も面白いので、案外来てみると良いかもしれませんよ?

良い返事を期待しています。

スイセン・ラ・キューラ』


「………………………。」

……………。

はっ!思考が一瞬止まってた。


……行こっかなぁ……。


「あの……。」

「はい?」

「やっぱり頑張ってみます。」

「はい、私もついているので、頑張りましょうね。」

ニコリと微笑んで、そう僕に声をかけてくれた。

ある一つのことを隠して。


「(この先に書いてある言葉は……流石に言えませんね。)」


『P.S.当然まだ私のこと、好きなんですよね?もしそうでなければ……?』

「(この約束がなんのことかわかりませんが……もしデコル様に何かあれば私は……。」


そして部屋にはいつの間にか、黒いバラが花瓶の中に入っていたことが、後日明らかになったのだが、これはまだ先のお話。

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