第6話
最悪だ。
まだ将来のことなんて考えなくてもいいと思ったが、妹の名前を聞いて絶望してしまった。
ドルフィナ・オルキヌス。
とあるゲームの敵キャラの……妹だ。
兄の名はアルコ・オークス・オルキヌス。
とあるギャルゲーの敵役。しかも主人公を徹底的に苦しめた挙句、最期は破滅して処刑される悪徳領主だ。
ゲームの内容はうろ覚えだ。レビューサイトをサーフィンしてネタバレを少し見た程度で、軽いあらすじとネタバレしか知らない。
主人公がヒロインを攻略しながら、主人公を疎ましく思うライバルが邪魔をするというのが主なストーリーであることは覚えている。
そして、俺はどのルートでも破滅エンドであるということも。
アルコというキャラを一言で表すなら、色ボケした豚野郎だ。
権力を乱用して女を囲い、主人公のヒロイン候補にも手を出そうとしてぶっ飛ばされたキャラクターだ。
苦戦するとか悲しい過去があるとか、そういったことはなく、最後は情けない声をあげてぶっとばされる。端的に言えば踏み台だな。
俺はネタバレで知ったから詳しい経緯は知らないが、どのルートでもアルコが破滅して死ぬのは確実だ。主人公の婚約者に斬り殺されたり、魔法で焼かれたりして死ぬエンドもあるらしい。
あの時はレビューでネタバレはよくないなって思ったけど、こんなことになるならもっとネタバレ見とくんだった。
「(クソ、あの女神め……! なんてとこに転生させたんだ!?)」
俺はその辺にあった岩を思いっきり殴った。
あの駄女神……なんでよりにもよって踏み台なんかに転生させたんだ!?
他にも色々あっただろ!? なのに何でよりによってコイツなんだ!? 何かしたか俺は!?
「……いや、あの人を悪く言うのはいけないか」
息を整えて心を落ち着かせる。
そうだ、彼女は俺にチャンスをくれたんだ。
第二の人生という超破格の願いを女神様は何の代償も要求すること無く叶えてくれたのだ。だというのに彼女を恨むのはお門違いだ。
ここは運が悪かったと思って前向きに対処しよう。
「(……まぁ、考えるのはもっと先でもいいか」
原作が始まるのは妹が16歳からだ。
まだ十代にすらなってないのに、十年先の事を考えるのは早すぎる。
時間はたっぷりあるのだから、考えるのは後でもいだろう。
ソレまでに鍛えよう
ソレまでに学ぼう。
ソレだけで充分だ。
その時の俺は、何も分かっていなかった。
自分がいかに楽観的な考えで、ソレがどれだけ無責任なのか。
何も見えず、何も考えず、何にも気づいてない
俺のバカさ加減がどれだけの人を殺すことになるのか、俺は気付こうともしなかった。
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