再生都市

月曜日

第670話 姉をよろしくお願いします

「初めまして。真白さんのルームメイトで白山しらやま静流しずると申します」


「どうも。真白姉の弟で伊勢翔太です」


「澪です」


 間髪入れずニッコリと続けるミオンに白山さんがうんうんと頷く。

 多分っていうか、真白姉から俺たちのこと聞いてるっぽい? まあ、真白姉が信頼してる人なら全然いいんだけど。

 それにしても白山さん、黒髪ストレートの純和風お嬢様。

 ミオンより少し背が低いのもあって日本人形みたいなんだけど、よく真白姉を制御できてるなあと。


「真白さんには夏にモデルのバイトでお世話になりまして、ご両親にご挨拶したいと思っていたんですが……」


「あー」


「別にいらねーだろ」


 と不貞腐れる真白姉。

 普通はちゃんと親に説明してって話だけど、うちはそうじゃないからなあ……


「真白さんにモデルしていただいた着物のカタログですが、こちらからダウンロードできるようにしておきました」


「あ、どもっす」


 ダウンロードコードの紙と一緒に名刺を受け取る俺。

 まあ、後で見ることにしよう。


「来春のカタログのモデルもお願いしたいと思ってますので、引き続きよろしくお願いします」


「いえいえ、こちらこそ。だらしない姉でご迷惑をおかけしますが……」


「おい!」


 そんな感じで本当に挨拶だけして終わりに。

 白山さんは本当にお嬢様らしく、ミオン家と同じように運転手つきの車に乗って行ってしまった。


「普通にちゃんとした人だった」


「はぃ」


「ゲーム内では姉上をよくどやしておるのだがのう」


「マジか……」


 でもまあ、ちょっとヤタ先生と似てるかも?

 美姫の話を聞く感じだと、真白姉のわがままを正論で黙らせるタイプらしいし。


「さて、我は奈緒を迎えに行くかの」


「美姫ちゃん。送りますよ」


「せっかくだから送ってもらえ」


 みんなでミオン家の車へと。 

 時間はまだ午前10時過ぎだし、ナットの家までは車なら10分もかからないはず。


「兄上。もらった名刺を見せてもらえるか」


「あ、うん。これ」


 そういえば名刺って、白山さんのご両親の会社の名刺でいいのかな。

 綺麗な箔押しが入った名刺には【加賀友禅かがゆうぜん 白山しらやま】って書いてあって、肩書きには『着物コーディネイター』と書かれている。


「ふむ。かなり老舗と聞いておるが、椿殿は何か知っておったりせんか?」


『白山は江戸時代から続く、加賀友禅の老舗になりますね。近年は若者向けの着物や小物の取り扱いもあって、UZUME所属の女性タレントが着たこともあったかと』


「へー、なんかすごい会社なんですね……」


 想像以上にガチでお嬢様だった。

 いや、まあ、ミオンだってすごい会社のお嬢様なんだけど。


「ショウ君。コードを」


「あ、うん」


 ミオンがタブレットを取り出し、俺から受け取ったダウンロードコードを読み取ると、その白山の限定カタログが表示された。


「ぁ、これ」


「真白姉だ。似合ってるなあ……」


 来年のお正月向けの新作晴れ着を着た真白姉。

 楚々とした立ち姿は、普段の様子からは全然想像できない……


「すごく綺麗です」


「うむうむ。さすが姉上よの」


 そんな話をしてると、


『お嬢様も一着仕立ててみてはどうですか?』


 と椿さん。


「ぇっと……」


「いいと思う。今から頼んでお正月に間に合うものかどうかわからないけど」


『間に合いますよ』


 とのことなので、改めてちゃんと選ぼうということになった。

 そういえば、今年は年末年始どうするか決めてなかったなあ……


 ………

 ……

 …


「美姫ちゃんの分も選べれば良かったんですけど」


「本人がまだ背が伸びるっていうから」


 真白姉も高校入ってから10cm近く伸びたからなあ。

 俺はあんまり伸びてないけど、きっと伸びるはず……


「ニャ!」


「ありがと。じゃ行こうか」


「はぃ」


 ミオン家でお昼にして、さっそくIROにログイン。

 今日はハクの醸造にチャレンジの予定。

 醤油ができれば、お刺身や焼き魚。あとは味噌を作って味噌汁だよな。


「はやく〜」「〜〜〜!」


 竜籠に乗るのは俺、ミオン、ルピ、スウィー、シャル、白竜姫様。


「ぃくょ?」


「はい。お願いします」


 しっかりと扉を閉めてそう答えると、すぐに体が持ち上がる感覚がやってきた。

 同士のシャルと抱き合っていると、ミオンもぴったりと体を寄せる。


「大丈夫ですよ?」


「はい……」


 大人しく目を瞑って待つこと数分。

 ゆっくりと下降した竜籠が静かに港の旧酒場前へと着地した。


「っぃた、ょ」


「どもっす」


 扉を開けるとすぐに飛び出していくルピ。

 その先にトゥルーたちの姿が見えた。


「キュ〜!」


「トゥルー、久しぶり」


 いつものように飛び込んでくるトゥルーをキャッチ。

 北西の小島に行った時以来かな? あそこにもまた採集に行きたいし、ラムネさんからもらえる予定のピスタシア(ピスタチオ)を増やせないかなと。


「ニャ!」


「うん」


 まずは持ってきた野菜や肉を竜籠から下ろす。こっちはいつも通りセルキーたちへのお裾分け。

 で、本命はハク。こっちは種籾、精米前のハク、精米した後のハクの三種類を持ってきてある。もちろん醤油と味噌のためのグリシン(大豆)も一緒に。


「〜〜〜?」


「行きたい〜」


「うん、いいよ。ルピも一緒に行ってきたら?」


「ワフン」「ゎたしも」


 スウィーと白竜姫様、ルピ、エメラルディアさんはカムラス畑へ。

 エメラルディアさんに懐いてるセルキーたちも一緒に向かうのを見送る。


 で、俺とミオンはトゥルーたちと一緒に旧酒場へと。

 中に入るとセラさんが待ってくれていた。


「何か足りないものがありましたら、お屋敷より持ってきますので」


「お願いします」


 瓶だったり壺だったりが足りなくなったらお願いする予定。

 醤油、味噌、みりんはいち早くマスターシェフさんに届けたいし、うまくいけばたくさん作っておきたいところ。


「じゃ、試そうか」


「はぃ」「キュ〜♪」

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