第654話 しゅわっとさわやか
「クルッル〜♪」
ダルシス(アーモンド)の樹上を軽快に走り、熟した実を落としてくれるラズ。それをキャッチするのはルピ。
ジャンプして空中でキャッチし、上手だよねと尻尾フリフリで俺に届けてくれる姿が可愛い。
「よ〜しよし」
「ワフ〜」
しっかり褒めて撫でてしてる後ろでは、ミオンとトゥルーたちがリモーネの実を採集してくれている。
「〜〜〜♪」
「はぃ。これですね」
「はーい」
エメラルディアさんに抱えられた白竜姫様も手伝ってくれてて、完全に和やかモードに入っちゃっている。
まあ、ここをすみかにしてたネクロファージャはいなくなったわけだし、念のためにエルさんとレダ、ロイで警戒してくれてるから大丈夫だろう。
「そろそろ移動しようか」
「はぃ」
リモーネも成長しきった実は収穫し終えたみたいだし、ダルシスの実もたくさん採れたし、そろそろ移動しないと時間のこともある。
相変わらず道はほぼない感じだけど、俺とエルさんで枝を払いつつ進む。
「また採りに来ることを考えると、ちゃんと整備したほうがいいかなあ」
そんなことを呟くと、
「ウリシュクやギリー・ドゥーたちを連れてくるのがいいだろうな」
「あ、たしかに」
パーンたちや、クロ、ラケ、アトたちに来てもらえれば、下草刈りとかはあっという間かな?
「ワフ」
「ん?」
ルピが振り向いて何かあるっぽい様子。
一応、ミオンたちに気をつけるように伝えてから、ルピのいる場所まで移動すると、右手側、西側が急な斜面になっていて、そこに洞窟の入口が見えた。
「ミオンたちも来て」
「はぃ」
ちょうど洞窟入口の真上まできたところで、まずは相談を。
時間は午後9時半ってぐらいだけど、小型魔導艇で港まで戻る時間を考えると、中を調べるのは微妙なところなんだよな。
「明日、いえ、明後日の木曜にしますか?」
「そうなるよなあ」
明日はライブがあるし、田んぼが順調なところを見せたい。
なので、今日お預けにすると最速は明後日なんだけど、俺的には今日のうちに探索は終わらせたいところ。
「帰り、みんな、運ぶょ?」
「えーっと、それだと船が置きっぱなしに……」
「港まで、運んで、ぉくょ」
とエメラルディアさんから提案が。
竜籠に乗って、俺たちは屋敷へ。トゥルーたちは港まで送ってくれると。
2回に分けて運んでもらっても30分もあれば大丈夫だろうし、その後、小型魔導艇もエメラルディアさんが回収して港に戻しておいてくれるとのこと。
「〜〜〜♪」
「オッケ。じゃ、お願いします」
スウィー曰く、その分、今日のリモーネとアーモンドで白竜姫様が喜ぶスイーツを作ればいいじゃんと。
「中を確認するんですね?」
「うん。スッキリさせておきたいかな」
「はぃ。あ、でも、古代遺跡じゃないと思います。アナウンスが出ませんでしたから」
「ああ、たしかに。じゃあ、そんな奥深くまで続いてるわけじゃなさそうだね」
最近は古代遺跡発見のアナウンス聞かなくなったよな。
まあ、次のワールドクエストが始まれば、なんとかっていう砦が古代遺跡なんだろうけど。
「えーっと、まずは下に降りないとだけど……」
「少し見てこよう」
「お願いします」
エルさんがすっと浮いてそのまま洞窟入口へと降りると、左右を見渡して右側、南西側を指差した。
このまま南へ進んで、しばらくすれば西側に下りれる感じなのかな。
「ルピ。エルさんの指す方向、先に見てきてくれる?」
「ワフン」
任せてと走り出すルピを見送って、しばらくするとエルさんと一緒に帰ってきた。
やっぱり下りれる場所があるみたいで、ちょっと急だけど問題ないだろうとのこと。
「じゃ、気をつけて行こう」
「はぃ」
………
……
…
「あかりを」
光の精霊のあかりが洞窟の入口付近を照らす。
ギリギリ二人並べるぐらいの幅と、ジャンプすると頭を打ちそうなぐらいの高さ。
海が近くにあるけれど、地形的に波が入ってこないのか潮の香りもしない。
「じゃ、いつも通りで」
「はぃ」
俺とルピ、今日はラズも一緒に先行する。
「ワフン」
「うん。モンスターはいなさそうだね」
整地されてる感じはないし、自然の洞窟で間違いなさそう。
また、スラッジバッドとかいるかなと思ったんだけど、やっぱりネクロファージャが怖くて住み着けなかったってところかな。
「ワフ」
「え、もう行き止まり?」
ほぼまっすぐ、少し上りになっている穴を20mほど進んだところで行き止まった。
その突き当たりの岩盤の隙間から、ちょろちょろと水が流れ落ち、地面の隙間へと消えていってるんだけど……
「湧き水?」
「ショウ君。行き止まりですよね」
「あ、うん」
追いついてきたミオンたちがあたりを見て、落胆ってほどでもないけど、何もなくて肩透かしな表情かな。
けど、どうにも気になるのがこの湧き水。小さい泡が見えるのは気のせい?
「どうしました?」
「いや、この湧き水が気になって」
インベントリからをコップを取り出して、湧き水を溜めてみると、
「炭酸っぽい」
「ぇ?」
鑑定……、【炭酸水】ってだけ出た。けど、そのまま飲めるかは微妙?
「本土だと湧き水って煮沸消毒?」
「だと思います」
ただ、それだと炭酸が飛んじゃうんだよなあ。
うーん、どうしようと思ってると、
「ぉ水は、浄化でも、だぃじょぶ」
「ああ、そうか。神聖魔法の浄化でいいのか」
「ぁ、私が」
ミオンに浄化してもらってから軽く一口含んでみると、しゅわしゅわとした感覚が喉にまで響く。変な苦味もないし、海水が混ざってる感じもしない。
「ちょっと待ってね」
ミオンにコップを預け、さっき採ったリモーネを2つに切ってギュッと絞る。
あとは軽く<冷却>の魔法をかけてから、また一口……、おっけ。
「飲んでみて」
「はぃ」
少し口につけたミオンの表情が驚きにかわる。
「美味しいです! これって、えっと……」
「リモーネスカッシュ、かな。シロップがあるといいんだけどね」
この炭酸水、どうにか量を持って帰りたいけど、炭酸が抜けないような密閉容器を作らないとダメだよなあ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます