以芸会友
木曜日
第577話 よくあるのがいけない
お昼は涼しい教室で。9月も半ばだけど、まだまだ暑いし。
そういえば来週の月曜は、今週土曜が祝日の振替休日で休みだっけ。
じいちゃんに聞いた話だけど、昔は土曜日に祝日が重なっても、振替休日にならなかったそうで……
「俺は問題解決で3ポイント、後方支援で3ポイント、情報収集で2ポイント、合計8ポイントだったな」
「私も同じね」
ナットもいいんちょも、今回のワールドクエストはほどほどの参加。
盗難があった魔石を取り返す手伝いで、貢献ポイントをゲットしたようだ。
「俺もたいしたことしてないと思うんだけどな」
「いや、してるだろ!」
ぼそっと呟いたところを、ナットに食い気味に突っ込まれた。
隣のいいんちょも、俺がサバナ島の事件解決に関わってるあたりの評価が高いんじゃないかっていう冷静な指摘。ミオンもうんうんと頷いてるし。
「そういえば、出雲さんはどうだったの?」
「ぁ、ぇっと……」
ミオンは後方支援で5SPの獲得のみ。
俺としては微妙に納得いかないんだけど、本人は全然気にしてなかったし、なんなら驚いてたぐらいだしで。
「ああ、そうだ。魔石の再結晶って応用魔法学と錬金術でいいのか?」
「応用魔法学<地>な。9レベル必要で、錬金術も5は必要だと思う。誰か試すのか?」
「ああ、わりと行けそうなやつがギルドにいて、試すつもりって言ってたからな」
聞いた感じだと、土木スキルのために取った応用魔法学<地>が7レベルあるらしい。
錬金術も合金のために取るつもりだそうで、それなら頑張れば早いうちに行けそうな気がする。
「ダメだったら連絡するから、わかったことがあったら教えてくれ。お前、めちゃくちゃスキル持ってるから、他のが絡んでる可能性ありそうだしな」
「りょ」
条件がはっきりわかればいいんだけど、何か調べないとダメなのかな?
っていうか、
「できるようになったら、氷姫アンシアのところに応募するのか?」
「ないない。別んとこから検証依頼が来てるんだよ。今後、売り物になるかもしれねーからって言ってたぜ」
「へー……」
小さい魔晶石にもMPは溜めておけるけど、だからといってたくさん持つのも微妙なんだとか。
個別にMP入れ直すのが面倒すぎるし、それぐらいなら再結晶化で大きくできた方が使い勝手もいいだろうとのこと。
モンスター倒せば魔石が手に入るのがわかってるし、そこは手間より効率ってところだよな。
………
……
…
「ナットがそんな話をしてたんで、何かあったらそっちも相談が行くかもですけど」
「了解よ。ポリーさん経由でってことね?」
「っす」「はぃ」
ベル部長がニヤニヤしてるのは、まあ、前から知ってるもんな。
ナットも上手くいきそうなら、何か利益が出る方法を考えないとって話。
「再生魔晶石って、MPの予備とか大型施設の再起動以外に需要あるんですかね?」
「そうね……、もっと魔導具が増えればあるかもしれないわ。魔導保存庫みたいに常にマナが必要な物のためにね」
「あ、そういえば、うちの保存庫も中サイズの魔晶石が必要でした」
今、屋敷にはもともと山小屋の地下にあったやつと、エルさんが持ってきてくれた大きいやつの二つが置かれている。
あれ? 最近、どっちにもマナ補充してないんだけど……
「エルさんがやってくれてますよ」
「うわ、マジか……」
山小屋にいたころは、自分で保存箱を開け閉めすることが多くて、その度に気がついたら補充してたんだけど、今は収めるのはシャルやパーンたち、出すのはミオンがやってくれてたりするからなあ。
「アルテナちゃんのおやつを出す時に開け閉めしますから」
なるほど。その時に気がついて入れてくれてるのか。
ログインしたらお礼を言っておかないと。
「みんなが魔導具を使い始めたら、再生魔晶石はかなり需要がありそうなのよね。天然の魔晶石って大きいのは珍しいし、それでも数が足りなくなりそうじゃない?」
「確かに……。再生魔晶石って壊れますしね」
「ぁ、そうでした」
「そのへんも含めて、うちでも調べてもらってるわ。二人にも意見を聞かせてもらうかもしれないから、その時はよろしくね?」
「「了解(です)」」
***
「ただいまー」
「おかえり、兄上! 午後7時から運営が解説ライブを行うらしいぞ!」
家に帰ると、2階から駆け下りてきた美姫にタブレットを手渡された。
「え? 何の? 次のアプデ?」
「建国システムの改修について説明があるらしい!」
「おお、マジか!」
カバンを置いてタブレットを見ると、建国システムの改修についての解説はもちろん、質問もできるだけ受け付けるとのこと。
時間は1時間予定だけど、延長もありと……
「よし、まずは飯だな。さくっと作れるものでいいよな?」
「うむ!」
まあ、今日はスーパーで冷凍ハンバーグが特売だったから、それで済ませるつもりだったのでちょうどいいや……
………
……
…
「ばわっす」
「良き夜よの!」
もうすぐ午後7時という時間にバーチャル部室に来ると、すでにミオンもベル部長も来ていて、解説ライブを待っている状態。
『ショウ君』
「来たわね」
ヤタ先生は不在。忙しいのか部活の終わり頃に来たけど、今日はベル部長のライブの様子を見に来るぐらいって言ってたからなあ。
で、午後7時になっても『Coming Soon』のまま……
「そういえば、ユキさんから連絡があって、サバナさんと島の防衛に参加した人に特別褒賞が入ったそうよ」
「「え?」」「ほほう!」
名目としては褒賞だけど、実質、補填なんじゃないかっていう話。
そのへんも、今日のライブで説明があるんじゃないかと。
「ん? じゃあ、マリー姉にも入ってるのかな?」
「ええ、マリーさんとシーズンさんにもね」
サバナさんが10SP、マリー姉やシーズンさんといった救助メンバーが5SP貰えてるらしい。……ひょっとして、俺も貰えてるかも?
『ぁ、始まりますよ』
「りょ。結局、5分以上オーバーか」
「いつの間にか開始が午後7時10分になってるわね。まあ、よくあることよ」
それ、よくあるのはよくないと思うんだけど……
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