日曜日
第565話 二人におまかせ
日曜日。いつものようにミオンの家に来てお昼。
今日は時間のかかる牛肉のワイン煮込みを作ったので、食べ終わったのは午後2時前。
まあ、たくさん作ったし、余った分は小分けにして冷凍庫に入れておいたので、近いうちに食べてほしい。
「お茶をどうぞ」
「どもっす」
「では、手短に……」
リビングで一休みしてからIROかなって思ってたんだけど、先に椿さんから先月の収支報告があるということで、それを聞く。
8月の中旬は合宿に行ったり、俺のじいちゃん家に帰省したりしてたし、何よりライブを休んでただけど、その分、短編動画の再生数が伸びたりしたそうだ。
「チャンネル登録者数も増えましたし、再生数も前月を上回っており順調です」
俺が好き勝手やってるだけなので、順調と言われても「あ、はい」としか答えられないんだよな。
支出に関しては、毎月のツール代だったり、今回は合宿の旅費なんかも入っている。なんだけど、利益はどんどん積み上がっていってるんだよな。
特に昨日のライブは『翡翠の女神が島に降臨!』ってことで、めちゃくちゃ投げ銭をもらって、合計で200万を超えてたらしい。
プラットフォームの取り分が引かれても、150万ぐらいになりますねーってヤタ先生がほくほく顔だった……
「うーん……」
「どうされました?」
「いや、なんか怖いなって」
俺自身、伊勢家の家計を預かってるけど、それはあくまで母さんから振り込まれる額の範囲内だからなあ。
その額と比べると……、いや、これはあくまで会社のお金だから、うん。
「まあ、赤字じゃなきゃいいや」
「ん」
「そう言えば、椿さんのお給料ってここから出てるんですよね?」
「はい。本社からの出向社員という形ですので、100%出向先が出す形になります」
良かった。
これでこっちが出してなかったら、本当におんぶにだっこだもんな。
………
……
…
「俺はステンドグラス作る準備かな。ミオンは?」
「私はスウィーちゃんたちと花壇のお手入れをして、その後は調薬と染色をしようと思います」
「おっけー」
今日は久々にのんびりできそう。夜は気分転換にルピたちと南側をぐるっと回ってこようかな。
そろそろ島の北側、草原を抜けた先に行きたい気もするけど……、まあ、ワールドクエストが終わってからの方がいいか。
「「あ」」
応接室へ行くと、エルさんがギリー・ドゥーたちと掃除をしてくれていた。
「なんかすいません」
「ありがとうございます」
「いや、姫がお世話になっているし、私も美味しい料理を食べさせてもらっているからな」
エルさんから俺たちがいない間の話を聞く。
アージェンタさんとは定時連絡はしてるけど、特に何かってこともなく。
エメラルディアさんが大丈夫なのか確認を取って、南の島もガジュたちも問題なしとのこと。
昨日、お披露目した新しい翡翠の女神の木像を、夜にでも取りに来てもらう予定。
「じゃ、ちょっと教会に行ってくるよ」
「はぃ」
ってことで、ルピを連れて教会へと向かう。
途中でリゲルとラズも合流して、ちょっと短い散歩ってことで。
「ニャ」
「やあ、シャル。ちょっと中見せてね」
確認したいのは教会の奥、一番高いところにある窓。
ガラスっぽいけど、かなりくすんだ古いガラスっぽいので、それをステンドグラスにしたい。
「……結構高いな」
下から見上げると二階の高窓ってぐらいの場所なんだよな。
サイズをきっちり確認するためにも一回外さないとだし、ハシゴ使うしかないか。
「ニャニャ?」
「うん、ちょっとあの窓をね。新しいのに変えようと思ってて。ハシゴ取ってこなきゃかな」
「ニャ!」
シャルたちが持ってきてくれるってことなので、俺は女神像とルピ、スウィーの像をわきに避けておこう。
スウィーの像、慎重に動かさないと羽を壊しそうで怖いんだよな。まあ、自分で直せるからいいんだけど。
「ワフ」
「おっと、ありがとう」
「「「ニャ〜」」」
屋敷の倉庫からハシゴを持ってきてくれたシャルたちにお礼を言い、ハシゴを立てかける。
シャルたちにしっかり押さえてもらいつつ、ゆっくりとハシゴを上ると、目的の窓が目の前に。……下は見ないようにしないと。
「……意外と大きいな。でも、この金具を外せばいいだけだし、取り替えも考えて作られてるっぽい?」
ただ、この金具ってどうやって外せばいいんだ?
壊すのはまずそうだし、うーん……
「あ、これなら行けるか?」
これ銅っぽいし変形できそうな気がする。MPはMAXだし、魔狼の牙のアクセもあるから大丈夫だよな。
「この部分だけ外側に曲げる感じで……<変形>」
よし、いい感じ。消費MPも思ったより少なくて1割未満だし、残りの金具も変形させよう。
あとは、ガラスを落とさないように気をつけないとだけど……、ああ、インベントリに放り込めばいいのか。
「ニャ〜?」
「大丈夫大丈夫。そのままお願い」
「「「ニャ〜」」」
シャルたちが心配してるし、ちゃちゃっと終わらせよう。
………
……
…
「ただいま」
「おかえりなさい」「おかえりなさい〜」「〜〜〜♪」
ちょうど玄関前でミオン達が染色を試しているところに戻ってきた。
手伝ってくれてるのはアトたちかな? ギリー・ドゥーはミオンにすっかり懐いちゃってるようで何より。
「あの、その板はなんでしょうか?」
「これは入れ替える窓のサイズを写しとってきたんだ」
ガラスをはずしっぱなしにしておくわけにもいかないので、型取りして同じサイズの板を作ってきた。
この大きさを基本に作ればいいはずなので、あとはデザインを下書きして、それに従って色ガラスを作っていく予定。
「なるほどです。デザインは決まってるんでしょうか?」
「いや、全然考えてなくって。ミオンは何かアイデアある?」
「えっと、アルテナちゃんやスウィーちゃんに考えてもらうのはどうでしょう?」
「なるほど。それだ!」
二人なら可愛い感じのいいデザインを考えてくれそう。なんなら、二人の姿絵でもいいんだよな。
「アルテナちゃん、スウィーちゃん、お願いできますか?」
「うん!」「〜〜〜♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます