第561話 段取りはしっかりと

「ほう! いよいよ、ミオン殿が島から中継するのだな」


「ああ。それで相談なんだけど、ミオンが最初からいた方がいいかな? あとから登場した方がいいかな?」


 どっちのタイミングの方がいいのか相談したんだけど、ヤタ先生には「どちらでもいいと思いますよー」と言われてしまった。

 ベル部長は、最初からの方がインパクトがあるし、今日のライブはミオンが主役でいいんじゃないかっていうご意見。


「個人的な意見を言わせて貰えば、ミオン殿がどうしたいかを優先させるべきであろう。兄上なら言われずともそうするであろうが」


「そうなんだけど、ミオンも悩んでるんだよなあ」


 二人のライブでミオンが主役でずっとっていうのを気にしてるっぽい。

 そんなこと気にする必要ないし、そもそもミオンが実況してなかったら、こんなに視聴者も増えてなかったと思うんだけど。


「であれば、兄上も何か用意すれば良かろうて。再生魔晶石の話でも良いが、以前頼んだ翡翠の女神の木像はどうなっておる?」


「ああ、あれか。今日明日で出来上がると思うし、それをお披露目しようかな。除幕式はミオンにやってもらう感じで」


 ガラスのリサイクルでステンドグラスを作るのは……さすがに間に合わないか。

 というか、そもそもデザインをまだ決めてなかったし、受け取ったガラスで足りるかも確認してないし。


「うむ。ところでアイデアを出した分の報酬が欲しいのだが?」


 そう言って手を差し出す美姫。

 まあ、食後のデザートのプリンぐらいなら安いもんだよ。


***


「ユキさんから連絡があったのだけれど、小さい魔石を集めて、大きい魔晶石にできるらしいって噂はもうかなり広まってるそうよ」


 バーチャル部室に来たところで、ベル部長からそんな話が。

 アズールさんから提供された情報は、あっという間に広まったらしい。


「じゃ、ワールドクエストも進んでそうですね」


「ええ、ワールドアナウンスがあったらしいわ」


「ほほう!」


 オフライン中にワールドクエストの通知ってどうなるんだろうと思ったけど、後から確認できるようになってるそうだ。そりゃそうだよな。

 ログインしたら確認しとかないと……


「それで、一部のプレイヤーが魔石を集め始めてるそうなの」


「「え?」」


「悪魔の目的が魔石にあるとわかったころから、投機目的で集める層がいたのだがな。かの噂で、それがさらに熱を帯びたのであろうて」


 で、そういう投機的なことには興味がない人たちから、小さな魔石を買い集めてると。そのへんはMMOらしいよな。


「それって、俺が再生魔晶石の話をしたら一気に冷めちゃったりしません? いや、逆かな?」


「どちらに転ぶかはわからんが、兄上が気にする必要はあるまい」


「むしろ早めに言った方がいいと思うわよ?」


 ああ、そりゃそうか。

 じゃあ、やっぱり再生魔晶石の話もしておいた方が良さそうだな……


 ………

 ……

 …


「ぉはよぅ」


「う、うん、おはよう」


 屋敷のベッドで目覚ますと、いつものようにミオンが隣にいるんだけど、やっぱりドキドキしてしまう。

 それと、気のせいかだんだん距離が縮まってるんじゃないかっていう……


「ショウ君。ワールドクエストの進捗を確認しませんか?」


「あ、うん、そうだった」


 起き上がってベッドに腰をかけてメニューを開く。

 ワールドクエストの情報はっと……


【ワールドクエスト:悪魔が来たりて】

『魔王国に侵入した悪魔はマーシス共和国や死霊都市へと潜入。さらにパルテーム公国やウォルースト王国へ向かう姿も目撃された。

 一部、死霊都市から離島へと潜入した悪魔がいたが、これを排除することに成功。

 また、捕獲された悪魔から得られた情報により、奴らが魔石を集め、それを大きな魔晶石として再利用しようとしていることがわかっている。

 侵入した悪魔たちを討伐し、奪われた魔石や魔晶石を取り返せ。

 目標:侵入した悪魔の討伐、および、目的の調査:52%』


「うわ、一気に進んでない?」


「はぃ。前に見たときはまだ一桁だったと思います」


 気にしてなかったのもあるけど、やっぱり目的がわかったのが大きいっぽい。

 あとは最終目的が判明すればかな? 古代遺跡の再起動が目的なんじゃないかと思ってるけど……どうなんだろ。


「ショウ君?」


「あ、ごめん。まずはご飯かな。そのあとは木像作りの続きをやるよ」


「はぃ」


 仕上げの時にミオンに来てもらって、細かいところを調整するつもり。

 今日のうちにそこまで進んでおけばいいし、一日おいて最終調整は明日にでも。

 ゆっくりじっくりやって大丈夫……


「あ、ミオンって明日は土曜だし習い事あるんだっけ?」


「はぃ。ライブもあるのでしっかり練習するつもりでしたけど……」


 しまった。明日の昼はミオンいないじゃん。


「えっと、おやすみしましょうか?」


「あ、ううん。午後7時にログインして最終調整で間に合うから」


 今日のうちにほぼ完成ってところまで仕上げて、明日の昼はトゥルーたちのところに行ってこよう。

 そういえば、エメラルディアさんにはトゥルーたちを紹介しないまま、南の島のガジュたちの警備を任せちゃったけど……、まあ、また今度でいいか。


「やあ、二人とも」


「どもです。何か連絡とかあったりしました?」


「そうだな。アージェンタ様が何度かエメラルディア様に大丈夫かと聞いていたが、それ以外は特にといったところだ」


 とエルさんが苦笑い。

 アージェンタさん、心配性だよなあ……


「ごはん〜?」「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


 裏庭で遊んでたっぽい白竜姫様とスウィーたちがやってきた。


「ワフン」「「バウ」」


 ルピたちが護衛してましたとドヤ顔なので、しっかり撫でて褒めてあげよう。


「ごはんにしましょうね」


「うん。まずは美味しいもの食べようか」

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