第270話●3Daysライブ初日の朝

 白子さんから聞いた話は、とりあえず、寝る前にヤン聖の件だけ伝えた。前作のいろいろについては、長めの休養期間に箱根へ行くことにしているからそこでゆっくり話すほうがいいという判断。

 なにしろ、未亜は、3Daysライブが終わったら、すぐ渋アリこけら落とし公演のレッスン、ラジオの最終回、こけら落とし公演当日に加えて、再来週には定期配信が入っている。もちろんこの間もいろいろな仕事が詰まっている。もう過去のことだし、いまの未亜に変な精神的負荷を掛けたくないからね。


 そして、今日はいよいよ早緑美愛の有明公演3Daysライブ初日だ!昨日はリハを堪能させてもらって、本当に楽しかった。こけら落としフェスも関係者ということでリハに立ち会えることになったので本当に嬉しい。未亜も喜んでくれた。その未亜は、早寝をしたからか、朝から元気いっぱいのようだ。


「おはよう!」

「おはよう、元気そうだね。」

「うん!問題ないよ!」

「モーニングを食べて来ちゃおうか。今日の入りは10時だったよね。」

「うん、そうだね。」


 モーニングを食べに行って、部屋で少しのんびりしていたらもう9時。今日もバックステージの収録があるけど、関係者入り口での撮影はNGだそうで、いったん楽屋までいって、着替えてから改めて、太田さんたちが詰めているライブ主催者控え室へ入るところを撮るそうだ。


「「おはようございます!」」

「二人ともおはよう。」

「おはようございます。今日から三日間よろしくお願いします。」


 関係者口から二人で入るとホテルの部屋を出るときにあらかじめTlackで連絡しておいたからか、太田さんと近藤さんが待ち構えていた。

 そのまま、昨日も使った未亜の楽屋まで一緒に行くと太田さんから「荷物を置いたら入り風景の撮影するから主催者控室までお願いね。先生も一緒に。」という一言があって、二人とも隣に入っていく。フィアンセという立ち位置ではあるけど、完全に信頼されている感がすごいなあ。

 今日、入りで着ている衣装はホテルの部屋で着てきたものだけど、紅白でも衣装をスポンサードしてくれたオフエクセルさんからの支給品だそうで、前日を含めて4日間とも違う衣装を入りの撮影用に借りているそうだ。渋谷公演まで終わったところで、また公式サイトで特別インタビューがあるとのことだけど、この辺、未亜にはしっかりスポンサーが付いてくれたということなのだろう。

 荷物を楽屋に置くと未亜はウイッグを付けてさみあんモードとなる。


「さみあんモードになったよ!」

「やっぱりライブ会場で見るさみあんモードはひと味違うな。」

「えへへー!圭司にそういってもらえると嬉しいね!じゃあ、太田さんのところ、行こっか。」


 二人で主催者控室へ行くと既に撮影スタッフが待機していて、簡単な段取りの確認がある。俺は撮影を控え室の奥から見ている感じだ。

 昨日もこなしていたからか、あっさりと撮影も終わり、このあとはステージ衣装に着替えてリハーサル。昨日も楽しませてもらったけど、今日も楽しみだなあ。


「おはようございます!」


 楽屋へ戻ろうとしたタイミングで主催者控室へ華菜恵さんがやってきた。


「あっ、おはようございます。」

「事務所から荷物を持ってきて、早緑さんの楽屋へ入れておきました!」

「華菜恵、わざわざありがとうね。」

「いえいえ!あと、早緑さん、今日から三日間、リハ中、私が早緑さんの楽屋に待機するので、何かあったらスタッフさんを伝令にして呼んで下さい。」

「華菜恵、ありがとう!よろしくね!」


 横浜公演の時は俺が楽屋にいたのだけど、今回は華菜恵さんがスタンバってくれる。本番中は、親友たちはみんな関係者席や招待席で見るところ、華菜恵さんだけは舞台袖に詰めていると聞いた。いままで太田さんが舞台袖にいたのだけど、華菜恵さんにある程度任せられるので、太田さんは主催者控え室に待機して、状況に応じていろいろな判断や対応が出来るようにするとのこと。華菜恵さんはすっかり重要な所を担当するスタッフになった感じだね。ちなみに3日間ともリハ中は、アリーナのど真ん中で楽しませてもらうことになっている。ありがたい。


「じゃあ、着替えて準備したら舞台袖までお願いね。バンドメンバーもそれぞれ控え室でいま準備しているから。」


 楽屋に入るとさっきはなかった荷物が開梱されていて、衣装が3着、ハンガーラックに掛けてある。ラックの所に二日目と書いてあるラックには紅白の最初に着た衣装、三日目と書かれているところには紅白で「主役」を歌ったときの衣装がそれぞれ掛けてある。


「今日の衣装はこの一日目って書いてあるところのでいいのかな?」

「うん、それだね。」

「紅白の時の衣装とは全然タイプが違うね。」

「今日は赤と青のショートパンツだね。ロックステージだからパワフルで動きやすい衣装だよ。」

「なるほどなあ、持っていこうか?」

「あっ、ありがとう!」


 今日の衣装を渡すと未亜はサクッと着替えはじめる。下着姿を見るのもすっかり慣れたよね。前はあんなに照れくさかったのになあ。

 未亜は部屋を出る前に軽くシャワーを浴びて、カラコンを入れて、下着類もスポーツブラとかに変えているから衣装を身につけてウイッグを付けるだけで済む。メイクはケータリングを食べたあとにメイクさんにしてもらうそうだ。横浜公演の時はちょうど買い出しに行っていたタイミングで済ませたらしい。といっても未亜は割と薄めなので、あまり変わらないけどね。準備が整ったところで、舞台袖へ向かう。いよいよ当日リハだな!

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