第150話○4thCD発売当日の大学にて

「やっぱり、買って正解だね。」

「朝からニュースが見られるのはやっぱりいいね。」


 昨日届いたダイニングのテーブルに座ったままで見られる22インチのテレビとブルーレイレコーダー。モーニングを食べながらテレビのニュースを見たい、という話から購入を決断したけど、こうやって実際に付けてみるとやっぱり正解だった。ノートPCとケーブルでつないで、食事しながら朋夏とか彩春とかの配信を見ることも出来るから楽しみが増えるよね。


 そんな朝を過ごしている今日はついに4thアルバム発売当日!今晩からサイン会ツアーが始まる!シークレットライブのリハはこの前問題なくクリアしたので、この10日くらいは収録もレッスンもテレビとかの仕事もおやすみして、サイン会ツアーがメインの仕事になる。とはいえ、日中はやっぱり大学の授業だ。いつも通り、授業を受けて、ランチはすっかりガラガラになった六号館地下で。せまじょコミカライズ第二巻発売決定にハイテンションになっている朋夏は今日もやっぱりワンコインランチ。お金の使い方にメリハリがすごいんだよね……。


「彩春さん、今日の定期配信、すごい楽しみにしているよ!」

「ありがとう!リアルタイムで見てくれるの?」

「もちろん!」

「俺と一緒に見るんだよな?」

「慧一が興味あるっていうから、せっかくだしな。」

「朋夏も一緒に3人で見ようかと思ったんだけど、バイトがあるみたいだからさ。」

「ごめんね、今日は大事な仕事があるんだよね。」


 今日、日向夏さんがシークレットで出演するから一緒には見られないよね。朋夏はいつ話すつもりなんだろうなあ。


「えっ、どっちかの家で見るの?」

「いや、新宿のカラオケだよ。」

「そんなところで見られるの?」

「ファジケの打ち上げでよく使ってる店なんだけど、最近のカラオケは店によってはMeTubeが大画面で見られるところも多いんだよ。」

「へえー!そうなんだね!」

「本当はスタジオで見てみたいけどね。まあ、ほらさすがに難しいじゃない。」

「そうだね、親友とはいえなかなか、ね。私が出来ることなら協力してあげたいけど。」

「あっ、ちょうど良かった!それなら彩春さんにお願いがあるんだけど……。」

「あっ!俺も!」

「二人そろってどうしたの?」


 ふたりとも鞄から……私のCDだ!


「「さみあんにサインもらってきて欲しい!」」


 二人も!?あっ、彩春がこちらをちらっと見てる。受けていいかどうかの確認だね。問題ないので私は軽く頷く。


「うん、わかった!今晩か明日には会えると思うから聴いてみるけど断られるかもしれないから期待しないでね。」

「「もちろん!」」


 あとで受け取って、彩春に返しておこう。やっぱりみんなにもちゃんと伝えた方がいいよね。


「そういえば、ともっち、しまっち、あきっちはサイン頼まなくていいの?」

「私はもう昨日のうちに頼んであるよ!」

「私も!フラゲしたからね!」


 うん、うそはついてないよね。頼んだ先が直接本人なだけで。


「私はサイン会に当選しているんだ!」


 えっ、志満、サイン会当選したの!?


「いいなあ。うらやましい!」


 いや、朋夏は正体知ってるじゃない!?


「ってことは二人ともサイン会は外れたんだ。」

「そうだね、サイン会は行かないよ。」

「サイン会は外れたなあ……。」

「実は、サイン会はパスしたおかげなのか、シークレットライブは当選したんだ!」

「えっ!?幸大も!?」

「慧一ももしかして。」

「うん、あたってくれた。」


 えっ!二人とも来るの!?伊予國屋ホールは狭いから絶対にみんなと出くわすよね。これどうしょう。


「盛り上がっているところ悪いけど、幸大と志満さんと華菜恵さんは1号館だろ?そろそろ移動しないとまずいぞ。」

「あっ、本当だね。」

「そんな時間か。じゃあ、彩春さんよろしくな。」


 さすが圭司!これは今日事務所に行ったら太田さんと相談だなあ。今日は彩春も定期配信第一回で事務所行くし、朋夏もそのシークレットゲストとして出演するからいろいろと交えて相談した方がいいかもしれない。


 水曜日の三限は圭司とは唯一別々で、圭司は「流通論」、私は「現代の経営」を受けている。圭司は彩春・瑠乃・明貴子と一緒で、私は朋夏と一緒だ。授業が終わったあと、朋夏が真面目な顔で私に話しかけてくる。


「さっきの件、どうしようね。」


 やっぱり朋夏も同じ気持ちだよね。


「それね。今日、朋夏も『御苑』でしょ?」

「うん、『御苑』だね。」

「太田さんと沢辺さんも交えて相談してもいいかもよ。」

「私に彼氏が出来た件はもう沢辺さんには伝えてあるから一緒に紹介しちゃうしかないかな。」

「それがいいね。」

「あとは彩春はもうばれているからその辺も踏まえた方がいいよね。彩春にも連絡しておいて、大石さんにも同席してもらってもいいかもね。」

「うん、そうだね。みんなと合流してちょっと相談しようか。」


 私は圭司に「流通論」を受けている3人も含めてさっきの件を相談しようとRINEをする。

 向こうでも同じ話題になっていたようで、みんなで事務所へ行って相談しようということになった。私と朋夏がアプリでタクシーを呼んで、6号館裏からタクシー2台に分乗する。


「私まで一緒でいいの?」

「タクシーは二人でも三人でも値段変わらないし、瑠乃も仲間じゃない!」


 私が呼んだ方には、圭司と瑠乃が乗った。圭司は助手席にいる。


「そっか……。なんか、未亜にそういってもらえると嬉しいな。」

「そうなの?」

「うん。アイドル候補生としてレッスンをしていると想像していた以上に大変だし、憶えることもたくさんあるじゃない。しかもこれを終わらせて本所属出来たとしても活躍できるとは限らないから、紅白に出るくらいの活躍をしている未亜って、私が最初に考えていた以上にすごいんだなって、ね。その人に仲間っていってもらえるのはありがたいよ。」

「……瑠乃はアイドルとしては既にライバルだと思っているよ。」

「えっ!?」

「でも、ライバルというだけじゃなくて、その前に大切な親友だから。私が協力できることは何でもするよ。」

「ありがとう……。」

「まさに好敵手だね。」

「うん、そうかもしれないね。来年の今頃はきっと仲良くしつつも競いながら二人で切磋琢磨してるんだと思う。」

「未亜……。そうなれるように頑張るよ!」

「楽しみにしてる!一緒のステージで歌いたいからお互い頑張ろう!」


 瑠乃も百合ちゃんも早く一緒に仕事がしたい!楽しみだなあ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る