第160話○サイン会アキバ!そして新幹線!
昨日のうちに「カバボクシ」のインストールと登録を済ませたけど、なんかすごいビジネスな感じがして、まだ大学生なのに社会人になった感じがするから面白い。
そして、彩春の声優デビュー作となるドルプロ・
ガシャ爆死で話題をかっさらっただけでなく、実際のボイスも絶賛されたことで、彩春は事務所仲間のグルチャに「ほっとした」と投げていた。それを見た紗和が「私の作った3周年記念曲と今年作った属性全体曲も早く歌って欲しいなあ」と返信していた。みんな少しずつ前に進んでいて、嬉しい。
私がいま頑張るべきサイン会ツアー、三日目はとても慌ただしいスケジュールだ。
14時半に授業が終わるとそのまま浜松町へ向かう。今日は時間がかなりタイトなのと場所が浜松町ということもあって、久しぶりに電車での移動になっている。ウイッグはもちろんカラコンも付けず、代わりに眼鏡とマスクを付けて帽子をかぶるという徹底防御。どこでどうばれるか判らないから本当に気をつけてね、とは、太田さん。
圭司は別行動。心療内科で診療とカウンセリングを受けた後、いったん家に帰って、大阪・名古屋ツアーの準備をしてからアキバへ駆けつけてくれることになっている。昨日もバタバタしていてうっかり荷物をまとめ忘れていたのだけど、ウイッグとか下着とかも含めて、全部まとめて持ってきてくれるって。毎日洗濯物を片してもらって、もうブラとかショーツとかを見られても平気になってしまったから慣れというのはすごいけど、そこまでフォローをしてくれる圭司には本当に感謝しかない。ほんと、毎日惚れ直してるよね!
三田線から浅草線へ乗り換えて、文明放送に着くと太田さんが待ち構えてくれていた。
「なんか、その格好、怪しいわね。」
「えー!太田さんが気をつけろっていうから頑張ったんですよ!」
「冗談、冗談よ!もう、怒らないの。でも、それくらいやっておけば完璧よ。」
太田さんにいじられながら局舎に入り、簡単な打ち合わせをして、すぐに今晩放送分のラジオ収録を済ませる。6回目の放送ともなるとだいぶ慣れてきて、少しアドリブみたいな話も出来るようになった。15分の番組なのにたくさんのメールが届いていて本当に嬉しい。
16時には文明放送を出発、今度はタクシーに乗って一路アキバへ。今日のサイン会はツノハズカメラハイパーメディアAKIBAで、ツノハズカメラさんとトーチレコード秋葉原店さんの共催なのだけど、なんと1階の屋外イベントスペースとのこと。とはいえ楽屋は今回も事務室なので、いったんツノハズカメラさんの会議室へお邪魔する。仮設楽屋で太田さんが持ってきてくれた衣装とウイッグを使ってさみあんモードになると自然と気合いが入るから不思議。
「失礼します。雨東さんがお見えになりました。」
「入っても大丈夫ですー!」
「……早緑さん、お疲れ。いろいろ持ってきたよ。」
「雨東さん、ありがとう!」
あらかじめ昨日のうちに太田さんから関係者パスをもらっていた圭司とも無事に合流、会場の準備をしていた古宇田さんも楽屋へやってきたので段取りを確認して、流れを質問しているとあっという間に17時50分。事務室を出ると店員さんの誘導で1階のイベントスペースへ向かう。サインスペースの周囲には厳重なついたてがあって驚いたのだけど、太田さんによると盗撮防止だとか。前は普通にオープンスペースだったんだけどなあ。でも、ついたてと電気ヒーターのおかげでけっこうあたたかくてほっとする。
今日は2店舗合同ということもあって、100人のサインをすることになっている。
新宿渋谷と全体的に制服姿の女子中高生が多くて驚いていたのだけど、アキバは男性ファンが多いみたいだ。やっぱり、こういうイベントに慣れているみたいで握手の時に話す一言も練られている感じがする。
サイン会は基本的に淡々と続いていく。サインを書いて握手をし続けるのは大変だけど、来てくれているファンのみんなは短い機会をものすごい楽しみにしてくれていたのだから疲れたなんていっていられない!
約2時間かけて100人へのサインと握手を無事に完了。楽屋へ戻るとうがい手洗いをしたあと、さみあんモードから通常モードへ完全にチェンジしてしまう。20時半にツノハズカメラさんを出ると今度はタクシーで東京駅へ。21時過ぎの新幹線で大阪に行くのだ。ほんの少しだけ余裕を持って駅に着くことが出来たので、安心して新幹線に乗ることが出来た。
ライブツアーの時と同じでグリーン車。圭司と私は並んで座り、太田さんは同じ列の窓際に座っている。それなりに混んでいて、前に乗ったときと比べると少し賑やかなのが面白い。席についてほっとしているとついこんな話題になる。
「判ってはいたけど、かなり慌ただしいなあ。」
「本当だね。」
「明日はもっと大変だからね。」
「判りました!」
新幹線が品川駅を出たタイミングでご飯を食べていないことをふと思い出す。
「ギリギリだったから駅弁買い忘れたね。」
「大丈夫だよ。」
圭司はそういうとバッグから何やら取り出す。
「
「荷物を取りに行って、アキバへ行く前に神田の売店に寄って買ってきたんだ。水道橋から少し迂回するだけでいいからね。多分時間がないだろうと思ってたんだよ。はい、太田さんの分もありますよ。」
「えっ、私の分まで!晩ご飯どうしようかと思っていたところだったのよ。先生、ありがとう!」
私だけじゃなくて太田さんのこともちゃんと考えているのがさすがだよ。圭司は本当に気配りの人だよね。
お弁当を食べ終わってほっとしたら寝てしまったようで、気が付いたら京都だった。圭司も太田さんも熟睡していたので軽く伸びをして、窓の外を眺める。真っ暗で何も見えないかと思ったけど、けっこうお店なんかが過ぎ去っていって飽きない。
ライブツアーの時と違って、今度の大阪と名古屋は、一緒のベッドで寝られるんだよなあ。まだ全部解決したわけではないけど、その変化が私の心を暖かくしてくれる。何処までも一緒に歩んでいこうね、圭司。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます